• テキストサイズ

夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第3章 はじまりのプレリュード【両面宿儺】


 翌日、伏黒と詞織は普段着ている呪術高専の制服ではなく、任務地の高校である杉沢第三高校の制服を着て、朝の街を歩いていた。

 伏黒は詞織の歩調に合わせ、ペースを落として少女の隣りを歩く。そんな詞織は、どこか落ち着きなく制服のネクタイを弄っていた。

「どうしたんだ、詞織?」

「……変な感じ」

「またイヤな予感か?」

「イヤな予感は昨日から続いてる。耳の奥がまだうるさい。でも、そうじゃなくって……制服が変な感じ。わたし、こういうの似合わないから。いつもの呪術高専の服じゃダメ?」

 唇を尖らせてねだるように詞織が言ってくる。
 その可愛さに「いいよ」と喉元まででかかって、伏黒は我に返った。

「高専の制服じゃ、学校に入れないだろ。我慢しろ。それに、その制服もちゃんと似合ってる」

 無理やり納得させようと頭を撫でると、詞織は少し驚いたように夜色の瞳を丸くさせ、「そう」と頷く。
 心なしか、少女の頬は赤みが差していた。そんな詞織の様子に、伏黒も頬を赤らめる。

「白いシャツのメグ、珍しい」

「好きで着てるわけじゃねぇよ」

 詞織の指摘に、襟元を触った。
 白自体、特別思い入れもなく、選ぼうともしない。手持ちの服も、暗めの落ち着いた色が多い気がする。

「でも、似合ってると思う。白い服も、メグは似合うね」

 フワッと花が綻ぶように詞織がはにかんだ笑みを浮かべた。
 その笑みに、伏黒の心臓に見えない矢が当たる。きっと矢尻にはハートマークなんかついているのだろう。

 伏黒は自分がどういう表情をしているか分からず、フイッと顔を背けた。
 ヤバい。口元が緩んでいる気がしてならない。

 意味もなく「ゴホンッ」と咳払いをしつつ、口元を引き締める。

「……どーも」

 そっけなく返しつつも、心臓はバクバクと鳴っていて、宥めるように左胸に手をやった。

 ……今度、白い服でも買ってみるか。

* * *

/ 381ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp