【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第30章 誤算と裏切り
兵隊と出会ってから3ヶ月が過ぎた。ミスティの諜報活動は兵隊の協力もあり順調に進んでいた。今日も兵隊がオモチャの家とは名ばかりの底無しの労役を強いられる収監所に帰る時間になり別れた。
パン屋で売れ残りのパンとチーズを買い帰路に着く。暫く歩けば3階建ての建物が見える。ここの3階の1室が潜入の拠点として構えた我が家なのだ。潜入だとバレないように街の人々に溶け込まねばならない。その為、ミスティは1階のバーでピアノを弾く仕事をしている。
「セレナちゃん、今日も頼むよ!」
久し振りに使う名前を店先でマスターに呼ばれたミスティは直ぐ行きますと答え一旦部屋に戻った。後で今迄の情報を纏めておこうと決めミスティはTシャツとジーンズの普段着から仕事用のナイトドレスに着替え少し濃いめのメイクを施しバーに向かった。
──
ミスティが働くバーはこじんまりとした店構えだが、ピアノの演奏と奏者の美貌が噂になり連日客が絶えない。今日も席が程よく埋まる位の客が集まっていた。
ミスティの奏でる音は客の心を魅了し離さない。客はミスティの奏でるピアノの演奏を肴に酒を楽しみほろ酔い気分で帰っていく。売上もそこそこになる為マスターは大喜びだった。
今日も2時間程の演奏を終えミスティは自室に戻った。
『…ただいま。』
何となく言ってみたが思いの外、部屋に響き悲しくなった。お前は独りなのだと言われている気がした。
ドレスを脱ぎ髪を解く。バーのピアニストから諜報部員に戻ったミスティは机に向かいペンを走らせた。
──
『ねぇ、兵隊さん。今回の作戦に参加する兵士は集まった?』
「いや、まだだ。」
『そう…私、そろそろ報告がてら此処を1度離れ仲間の所に戻って事情を話してくるわ。私の仲間は強いし頼りになる。』
ミスティはレインへ情報を持ち帰る為ドレスローザから一旦離れる旨を伝えた。
「君の仲間は信用してくれるだろうか…」
問題はそこだ。情報として伝える事は出来ても持ち帰る事が出来る証拠がない。今ある証拠と言えばこの国に存在するオモチャそのもの。これは見て貰うしかない。
『私が上手く説明する。必ず仲間を連れて戻ってくるから!』
「そうか…宜しく頼む。」
「…。」
その様子を物陰から見ている者が居た事に2人は気付かなかった。