第4章 金魚の恋
くちゅ…ぴちゃ…
2人の唇からは水音が絶える事なくしていた。
どれくらい、こうしているのだろう。
お互いに言葉を忘れてしまったように、
ひたすらに口を吸いあっている。
不意に、杏寿郎が唇を離した。
その瞬間、の唇からは唾液が零れ、
縦につぅーっと垂れていく。
蕩けた瞳で上目遣いにこちらを見るは
とても扇情的で、杏寿郎は思わず喉を鳴らしていた。
、とても、綺麗だ。本心だ。
先程、俺を拒んだ君の強い眼差し…依然と同じだ。
君は、綺麗だ。自分の事を貶めるような物言いはしないでくれ。
杏寿郎の言葉に、は我慢しきれなくなり、
その胸の中に身を埋め泣き出した。
…っ…うっ…杏寿郎さん…っ
ここに、来てからも…ずっと…
思い出すのは杏寿郎さんの事ばかり、で、
何度…こうして会える事を夢に見たか…
本当は、会えて…すごく嬉しかったです…
杏寿郎はの背中を撫でてやりながら、
の話を黙って聞いていた。
…俺も嬉しいぞ。
拐かされたと聞いた時には生きた心地がしなかった。
今、君と居られる事が俺には夢のようだ。
そう言って、を強く抱きしめる。
はそのまま杏寿郎の胸で泣き続けた。
ー…
半刻程、そのまま泣いていたが、
さすがに涙も止まり落ち着きを取り戻しつつあった。
杏寿郎はのその様子を確認すると、
穏やかな声で語りかけた。
すぐにも、ここを出られるよう店主と話をしてこよう。
俺が迎えに来るまでは、店に出る必要もないように…な。
それまで、今しばらく待っていて欲しい。
は杏寿郎の言葉に
首をゆっくりと縦に振った。
そんなを杏寿郎は満足そうな笑みを浮かべて見ると、
軽く唇に触れるだけのキスを落とした。
よし!決まりだな!
では、今日はこれで帰るが今夜も冷える。
暖かくして寝るんだぞ?
そう言うと、そのまま立ち上がる杏寿郎。
は、自分でも無意識のうちに、
杏寿郎の着物の裾を掴んでいた。