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一夜の夢物語

第4章 金魚の恋





ふと、外を見ると雪が降ってきていた。

道理で、冷えると思った…。


こんな天候では、今宵はもう客はこないだろう。
否、そうであって欲しい。

そんな事を考えながら、
着物を軽く整えて窓を閉めようと立ち上がった。


店の前の通りはやはり人通りが少なくまだらであった。
降り始めた雪に、帰路を急ぐ人々の姿が見える。

ぼんやりと人の行き交う様子を眺めていた。

その時、の目がある一点に集中した。


店の前の通りを男性が連れ立って歩いている。

花街では当たり前の光景にすぎないが、
問題なのはその男性の容姿だ。


異人のような黄金色に輝く髪は、
ところどころ炎のように赤く染まり、
重力に逆らうように立ち上がっている。

つり上がった猫のような瞳は
力強く、意志の強さを感じられる。


見間違える筈はない。

が心から慕う相手…

以前の自分の婚約者であった。


何故、このようなところに…?

男性ならば花街に来るのは不思議ではないが、
彼がこのようなところに居るのは違和感でしかない。



しばらくその姿を窓から見つめていたら、
窓の外のその人と視線が合ったような気がした。

…ドクンッ…!
心臓が跳ねるように鼓動が速くなる。

それと同時に、
は障子を素早く閉めて身を隠した。


彼の姿を見れたのは嬉しかったが、
自分の今の姿を見られたくなかったのだ。


せめて、彼の中では
普通の娘として終わりたい。


女郎になった自分など、
決して見られたくない…。



恐る恐る障子を開き外を覗き見ると、
煉獄杏寿郎の姿は既になかった。


気付かれた訳ではない。

ホッとしたと同時に、

少しだけ、寂しさを感じる自分に失笑する。


何を…期待しているんだ…と。



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