第12章 イベリス *
一日授業を受けて、皆んなで夕食を食べてからお風呂に入って、悠仁の夕食を作り、それを運ぶついでに一緒に映画を観ながら呪力操作の訓練をするのがすっかりと日々の日課となっていた。
「ご馳走様でした!今日も美味かった!」
両手を合わせて元気良く挨拶し、にこりと満面の笑みを見せてくれる悠仁。
私は悠仁の、そのお陽様みたいな笑顔が大好き。
いつも元気を貰えるの。
悠仁は私の用意したごはんを一度も残したことはなかった。
必ず「美味しい!」と言ってくれて、本当に美味しそうに完食してくれる。
悠仁に「美味しい!」と言ってもらえるのが嬉しくて、毎日のメニューを一生懸命に考えた。
夕食を食べ終えて、デザート代わりにお菓子を広げて映画鑑賞。
映画にはポテチとコーラでしょって悠仁のこだわりみたい。
そんなデザートタイムも日課の一つとなっていた。
ソファーに並んで座り、映画を観ながらいちごみるく片手に甘い物へと手を伸ばす。
「桃花って本当、甘いもん好きな。いちごみるくにチョコレートって口の中甘々じゃん。」
『うん、甘いの大好き!本当に小さな頃にはお菓子って食べたことなかったんだけどね、悟と一緒に住むようになってからかな?甘い物食べる機会が多くなって...気が付いたら大好きになってたんだよ!あと、おばあちゃんが作ってくれるいちご大福も大好きだったなぁ。』
(おばあちゃんのいちご大福...食べたいなぁ。今度久しぶりに悟に作ってあげようっと!)
ふとした瞬間におばあちゃんとの想い出を思い出して、会いたくて、会えなくて淋しくなることもある。
「へぇー。桃花、甘いもんばっか食ってっからそんな甘い匂いすんのかな?」
私の隣に座っている悠仁が私の首元に顔を近付けてスンスンと香りを嗅ぐ。
『...ふぇ!?甘い匂い...!?する...?』
急に近くなった距離にドキリと心臓が跳ねる。
「うん、すげー美味そう...。」
更に首筋に悠仁の鼻が付くくらいに距離が縮まって、悠仁が話す度にかかる息が擽ったい。
「甘いもんばっか食ってんのにこんなに細いし、軽いし。」
『そ、そうかな...。』