第4章 夢と過去
寂しそうな横顔だと思った。
気になり始めたのは、ある日の学校帰り。
りんごみたいな赤い髪がよく目立って目を惹かれたのをよく覚えている。
(どうして、あんなに寂しそうなんだろう?)
窓際に座って難しい本を読んでいる少年はいつも寂しそうな、悲しそうな顔をしていた。
読書に夢中で自分を見つめている存在がいることに気づいていないようだ。
その日はとくに気にも留めずに帰宅した。
次の日。やはり赤い髪の少年は、昨日と同じ顔をして難しい本を読んでいる。
(また寂しそうな顔)
豪邸というほど大きくはないが、それなりに大きくて目立つ家は裕福だと伺える。
表札を見ると『ローズハート』と書かれていた。
(ローズハート……)
そういえば、聞いたことがある。優秀な女医がいると。
そんな優秀な女性の元で産まれ、裕福な家柄であるにも関わらず、彼は全く幸せそうに見えない。
それどころか何かを必死に耐えているようにも見える。
「リドル! 何してるの!? 自習の時間は過ぎてるわよ!!」
「は、はい……」
中から女性の怒鳴り声が聞こえてきて、少年は慌てて部屋の奥へと消えて行った。
この日を境に、リドルという少年を気にかけるようになった。
(……いた)
学校帰りや何かの用事でローズハート家の前を通った際は、リドルがいつもいる部屋の窓を見るようになった。
彼の表情は明るくなったことはなく、いつも沈んでいた。
明日は笑っているだろうか、今日はどんな表情をしているのだろうか、何回も同じことを繰り返していれば自ずと周りも気づいていくものだ。
「毎日毎日よく飽きないよねぇ。そんなにあの子が気になる?」
友人のナタリーは、飽きもせず毎日同じことを繰り返している彼女を哀れみを込めた目で見る。