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わたしは、この日のために【鬼滅の刃】

第13章 無限列車前夜


それは仮初の日常だということに愛は気づいている。
もうすぐだということが、肌で感じられる。

ご飯をみんなで食べ、千寿郎は父親の元へと食事の片付けに行った。


杏寿郎は親方様へ任務の報告をしに行ったときのことを思い出していた。
報告をすると、その場で次の任務を言い渡されたわけだが…

それは汽車の中でたくさんの人が行方不明になっているということであった。
隊員の何名かもすでに消息を経ったらしい。

「杏寿郎。愛を連れて行きなさい」

「いえ!しかし、愛には荷が重すぎるかと。しかも、まだ治ったばかりで」
危険な任務だということはわかり切っている。
そこに大切な愛を連れて行くのは困難なことだと考える杏寿郎。

「杏寿郎。愛を信じて。きっと、杏寿郎の助けになると思うよ」
優しく、何もかもを見透かしたような目で言った。

「…御意」
杏寿郎は不安を残しつつも、親方様がそこまで言うならと承諾した。



「愛、病み上がりで悪いが、任務が入った。明日、出発する」

きた
予感が当たった
いよいよである


『…承知、致しました。詳細を聞いても?』

「うむ!汽車に鬼が出るらしい!」

…やっぱり

杏寿郎の声が少し遠くに聞こえた。
何だか急にこみ上げてきたものが止められなくて、愛は杏寿郎に抱きついた。

「!… 愛?どうした?」
愛の突然の行動に驚き、固まる杏寿郎。
見ると、愛は小刻みに震えていた。

杏寿郎はポンポンと背中を優しく叩いた。
眉を下げ、優しい顔をしていた。

「…こうするのは2回目だな。前は家が恋しいと泣いていたな?今度は何が恋しいのだ?」


『…杏寿郎様です』

愛は鼻声でそう答えた。

杏寿郎は大きな目をさらに大きく見開いた。

『その任務は絶対に行かなければならないのですよね?』

「…そうだ。それが俺の責務だ」

『…わたしの全てを懸けて、お守りいたします』
抱きつきながら、顔をあげ、目にいっぱいの涙を溜めながらも強い意志を示した。

「…それはこちらの台詞だ。俺は愛のことを守る。大丈夫だ!心配ない」

ポロポロと涙を流している愛が落ち着くまで、杏寿郎は背中をさすり続けた。

そんな夜であった。
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