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大正鬼殺譚 〜炎柱の継子〜

第6章 日常





戸締まりを終え、居間へと戻る。


相撲は、久しぶりだな。

父上と千寿郎と共に行くのは、
初めてかもしれない。

千寿郎はというと、
すごく嬉しそうな様子だ。

父上が、自分を取り戻して以来、
千寿郎は目に見えて明るくなった。


以前は、常に眉を下げ、
不安げな表情を浮かべてる事が多かった。


…やはり、まだまだ敵わないな。


父代わりのつもりで千寿郎に接していたが、
千寿郎のこの笑顔を見て、

やはり、父親の存在とは偉大だと感じた。



ー…


居間へ戻ると、父上と美玖の姿が見える。

美玖は、父上の前で、
くるりとまわって見せていた。



…!着物を着替えたのか!

先程とは違う、綺麗な着物に身を包み、
嬉しそうに微笑む美玖。

普段は上の方で髪を括っているのに、
今日は片側に流して下の方でまとめてある。


…まるで、母上がここに居るかのようだ。


美玖の姿を
優しく見つめている槇寿郎の姿も相まって、

余計に、そのような錯覚を引き起こす。


そうか、あれは母上の着物か。
よくよく見れば、在りし日の母が、
身につけていたような覚えがある。


懐かしい思いが杏寿郎の心を満たす。

ひどく、穏やかな気分だ。

平穏とは、こういう事なのだろうな。


ー…父上、戸締まりを終えました!


……










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