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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第4章 回想




「何でって…。別にお前に損はねぇだろ?」

「…無いよ。無いから変なんだよ」

「変?」

その子は眉をひそめる。

「だって、私を何もかもから守ってくれるんでしょ?
なのにその見返りがごはん作るだけなんて…」

「お前チビのくせに頭固ぇんだな」

めんどくさそうに言った。
…チビのくせには余計だ。

「俺が食いてぇからお前が作るだろ。
俺のしたいようにしてもらう代償だ。
そんだけの価値が、あのメシにはある」

色々言われすぎて、
何だかよくわからなくなってきた私は、
もう考えても無駄な気がしてきて

「…じゃあ、そばにいる」

素直に了承した。
するとその子は満足そうに笑ってみせた。
そして私たちは、小指を絡ませて、
約束を交わしたのだった。



枝に上がった時と同じように抱えて下ろしてもらい、私たちは2人、門の前に出た。

「木の上乗れて嬉しかった。ありがとう」

「メシの礼だから」

そんな話しをしていると、

「お、睦ちゃん」

おじちゃんが通りかかる。

「あれ?おじちゃん!」

おじちゃんはにっこり笑うと男の子の方を見て

「何だ、お友達か?」

と、訊いてくる。
おともだち…?かな?

「…うん。…そうだよ!」

その子の方を見ると、少し緊張しているのか
無表情だった。

「そうかそうか、良かったなぁ、お友達ができて」

そうして私の頭を撫でてくれる。
優しいこの人が、私は大好きだ。

「仲良くしてくれてありがとうな」

その子に向かって言うと、
彼の頭も撫でてやっている。
その子は驚いて固まっていたが、
おじちゃんはどこ吹く風だ。
少し悔しそうにその手から逃れると、
その子は一瞬のうちに、消えてしまった。


ごはんを作るたびに、
…あの空き家へ行くたびに、
私はあの子の事を思い出していたのに、
会ったのはその1回きりで
そのうち空き家にも行かなくなって…
記憶の端に追いやられてしまっていた。
ウソみたいに鮮明に蘇った。

すっかり抜け落ちていた、私の記憶。
絶対に忘れたらいけない思い出。
彼はきっと、ずっと覚えてくれていたんだ。
たまに見せる、あの泣きそうな悲しげな表情。
あれは、私を待ってくれていた。


私は進むも戻るも出来なくなって
ただそこに立ち尽くしていた。



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