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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第1章 嚆矢濫觴




泣きたいような気持ちを抱えて
自分の店に入る。
ドアに鍵をして、明かりがもれないようカーテンをひいた。

春の始まりと言えど、まだまだ夜は早い。
すでに外は暗くなりかけている。
作業台の前に座って、大きく息を吐く。

…感じ、悪くしちゃったよね。
あーあ。
蜜璃ちゃんにも、
宇髄サンにも悪いことしちゃったなぁ。
…でも私が居なくなって好都合だったよね?
あれ以上つまらない空気にしちゃ申し訳ないし、
結果よかった、と、思うしかない。
2人きりにしてあげられたし。

私はもう一度、大きく息をすると
作業に取り掛かった。

取り急いでやらなければならない仕事ではなかった。
蜜璃ちゃんに告げた、
忘れ物をした
なんて言うのは口から出まかせだ。

でも、何かに没頭したかった。
図らずも
人の恋路を邪魔してしまったような気がしていた。
そしてそれを、そしられたように感じた。
あの宇髄サンの、呆れたように呟いた一言に、
何故かとても傷ついた。

私は、蜜璃ちゃんと2人、あのお店に行くのを
ずっと楽しみにしていたんだ。
2人の都合がなかなか合わなくて…
蜜璃ちゃんが忙しいのも、大変なのも知っていた。
だから、待って待って、やっと…やっと行けるって、
本当に楽しみだったのに。

なのに、あの場で邪魔だったのは、
突然押しかけた宇髄サンじゃなくて
私の方だったように思えて。
蜜璃ちゃんも普通に受け入れてるし。

私は制作の手を止めた。

だめだ。
気持ちを入れ替えなくちゃ。
悲しい物が出来上がってしまう。
泣きながら作ったらだめ。

目を閉じて、
蜜璃ちゃんを思い浮かべた。
優しくて、可愛くて、魅力的な。

そうだ。
蜜璃ちゃんへのプレゼントにしよう。
今日の、お詫びに。
簪じゃなくて、髪留めにしよう。
桜の花をモチーフにして。
蜜璃ちゃんの優しいイメージで。







「できた!」


私は顔を上げ、ライトにその髪留めをかざしてみる。
桜の型をとったそれは、光に透かすと
キラキラ光る。
細く、金で縁取りをして、淡い桜色、
光るように貝殻の粒子を混ぜ込んで、
光の具合で虹色に変化する。

良かった。
思ったより上手にできた。
これなら、蜜璃ちゃんももらってくれるかなぁ?



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