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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第1章 嚆矢濫觴




「おいコラ睦」

左腕をつかまれ、走っていた体は強制的に
ぐんっと後ろへ引き戻される。
その勢いのまま、背中から抱きこまれてしまう。

「離して下さいよ!」

「何でだよ。ワケ言ってみな」

『何で』?『何で』なんて、
そんなの、こんな自分を見られたくないからだ。

「———…」

でもそんな事言えない。
言いたくない。

「ワケもねぇのに、俺がお前を離すか」

何で。
私の気持ちは無視なのか。
口にしなくても、察してはもらえないのか。

私は、絡みついた彼の腕に手をかけ、
どうにか外そうとする。
…外れるわけないけど。

「…何してんだお前。
おい、ちょっとこっち向け」

「え″!」

絶対に嫌だ!

宇髄さんの言葉を受け、
思い切り顔を背けた私にムッとしたのか、

「てめぇいい度胸だな…」

声を震わせた。

「い、今ちょっと1人にして下さい!」

「だから何でだって言ってんだよ!」

「言わない!」

「は…?あ、おい…!」

言葉を交わす中で、少しだけ油断したのか、
腕が緩んだ事に気づいた私は、
その場で思い切りしゃがんだ。
するとスポッと、下に抜けられた。
そのまま地面を蹴るけれど、
宇髄さんの反応の速さは予想を超えていて、
私はすぐに肩をつかまれる。

私はバランスを崩して、その場にすっころんだ。








「痛い」

私は不機嫌だ。
思いっきりだ。

「だから悪かったって」

本日、十数回目の台詞をはきながら、
宇髄さんは私の左足首に包帯を巻いてくれている。

何でこんな目にあうんだ。

私はすっころんだ時に
足首をひねってしまったようで。
抱き上げて運ぼうとしていた宇髄さんを
断固拒否して、
支えてもらいながら、歩いてうちまで戻ってきた。

宇髄さんは器用に、私の足首を固定してくれる。
私はそれに、つい見入る。

大きい手。なのに、繊細に動く指、
きれいな銀の髪、整った顔立ち。
こんなにじっくりこの人を見たのは初めてだ。

包帯を巻きながら、私の視線に気付いたのか、
目線だけを私の方へ向けてくる。
私は何だか気まずくて、ぱっと横を向く。

はぁ、という溜め息が、私の耳に届いた。

…何か誤解させてしまった気がする…。




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