• テキストサイズ

【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第1章 嚆矢濫觴




「睦…」

呼ばれて、

「…はい」

気付く。

この優しい声に、もっと呼ばれたいと。

「好きだ」

「っ…も、もう、何回も聞きました」

「何回も言うんだよ」

そう言ってまた、ほっぺたに口づけをする。
甘すぎて、どきどきして、
どうしたらいいかわからない。

……。

どきどき、してる…。

私は、無意識に自分の胸に手を当てた。
この間と違う。

あの時は、ただ緊張してた。
今は、違う…

「俺は睦が好きだから。
お前にも、好きになってもらいたい下心もあるしな」

おでこを合わせて、自嘲気味に笑う。

「誰がお前を悪く言おうと、俺はお前を愛してるからな」

目を閉じて、私に言い聞かせるように呟いた。

「つーか、誰にも悪くなんて言わせねぇ」

両手で頬を包まれる。
強い瞳に絡め取られ、
私は動けない。
目も、そらせない。
この人が言う事は、本当なのかもしれない。

何で私を好いているのかわからないけれど、
そう言ってくれるのも、
言葉だけじゃなく、心が伴っているのを感じる。

私が信じようとしなくてもそうなるようにする、
っていうのは、この事だろうか。

あんなふうに、勝手にヤキモチ妬かれて、
また怒鳴られる時がくるんだろうか。
…それでも、この人ならいいような気がする。

「睦、好きだ」

しつこく愛を囁くこの人の、瞳の奥を覗き込む。
私が作った小さなライトの橙に照らし出されて、
深い紅色が揺れている。

きれい、な 目。

長い間見つめ合った後、宇髄さんは
深く息を吐き目を伏せると、
私を腕の中に閉じ込めた。

私は彼の胸に、こてんと頭を預けてみる。
すると宇髄さんがギョッとしたように私を見下ろしてくる。

「……?」

私は頭をくっつけたまま、見上げて、彼を見た。

「お前…」

信じられないものでも見るような目をして
言葉をつまらせる。
何か言いたそうにしているが、
なかなか話し出さないので私は口を開く。

「宇髄さん、誤解しないで下さいね。
私は自分が嫌いなわけじゃありません。
おじちゃんとおばちゃんのおかげで、
随分、自己否定のくせがなおりました。でも、
ふとした事がきっかけで、
発作のように記憶が蘇ってしまう。
さっきみたいに」

宇髄さんは、黙って私の頭を抱えた。


/ 2219ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp