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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第9章 好敵手





「…うちは親父がひどかった。だから…
父親なんかにゃなれねェが、
お前の言う兄貴くらいにはなってやってもいいぜ」

撫でられた頭をぐいっと引き寄せられ、
彼の肩口に押し付けられる。
近づく体温にホッとする。

「不死川、さ…」

「宇髄にも話せねェ事は、俺が聞いてやるよ。
…なァ?宇髄よォ」

——え?
不死川さんがそう言ったのとほぼ同時、
私は強く、腕を引かれていた。












小さくて愛しい女が、俺の元に帰ってきて
それを抱きしめて眠るのが
こんなに幸せなモンなのかと思い知らされる。

安心させてやるつもりだったのに、
むしろ俺の方が安心させられて、
こいつは強ぇんだったって事を思い出した。

ふわふわと夢ん中を漂っていた意識は、
唇に触れたぬくもりで引き戻される。
…口づけ?
重たい瞼を上げると
眼前に睦の顔があって、
離れたくねぇ俺は、もう一度それに触れた。

体ごと引き寄せると
なんの迷いもなく俺に抱きついてくる。
甘えるようなその仕草は、
すっかり以前の睦だった。

睦の目を見つめると

「…おはよ、ございます」

なんて、可愛く頬を染めてみたりして…
朝から我慢出来なくなりそうで、
やめてもらいたいが…

「…ぉはよ…」

平静を装って挨拶を返す。

「宇髄さん、私大丈夫な気がします」

晴れやかな表情で言う睦。
…大丈夫、って?

「…何、が…」

声も出ねぇや。

「ちゃんと、宇髄さんのこと好きです」

「…」

ちゃんと…?
何があってこんな顔しやがる。
昨夜と別人だ。

俺が寝ぼけているとでも思ったのか
睦は頭を撫でてくる。

「…行きたい所があるんです。
行かせて、くれる…?」

「…1人で、行くのか?」

「…はい」

「…どこへ、行くんだ」

そんなの…今行く所なんて決まってる。
ひとつしかない。
それでも、少しの期待を込めて訊いてしまう。

「言っても怒らない?」



「怒る、ような所なんだな」

あいつん所…しかねぇよな。
昨日、あんな別れ方して気になっているだろう。
俺だって後味悪ィ。

「怒らせたり、悲しませたりする理由じゃないんです」

静かに告げる睦の声にウソはねぇ。





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