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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第1章 嚆矢濫觴




でも、
私の事を好きだというこの人に、
昔話を聞かせるのもいいかもしれない。
私が、それに値しない事が
わかってもらえるかもしれないから。

私の心は、なぜか卑屈になっていた。
何度も目の前に現れるこの人が、煩わしい。


「私ね、宇髄さん。
両親がいないんです」

「ん…」


唐突に話し出した私に、
少し驚く宇髄さん。
私は川を眺めながら続ける。


「…お母さんはね、私の事をダメな子だって言うの。
毎日毎日。
洗濯してもダメ、ごはんを作らせても、
掃除も、遊びですら、何でも。
私のやることなすこと、下手だ、なってない、
ダメだって。
その度に、何度も叩かれた。
5つにもならない私をですよ。
でも、お母さんは言うんです。
睦のためなのよって」

「……」


宇髄さんは黙って聞いている。
私は、母親に否定され続けた事を思い出して、
話しながら泣きたくなってきた。


「お母さんは私の為にしてくれているのに、
私はお母さんの言う通りにできないの。
ダメな子なんです」


宇髄さんが拳を握ったのがわかった。
私は構わず話した。


「お父さんは、私には優しかった。
でも、その日、隠れてお母さんを殴っていた。
お母さんも、ちゃんとできない事があったのかなと思った。
その次の日の朝はね、寝ていただけで
お母さんに叩かれた。
朝なのに、起きてこないって。
ほっぺたも、頭も、お腹も蹴られた。
ごめんなさいって言っても、終わらないの。
私が悪かったんだから、やっぱり
私はダメなんだなって思った。」

「睦…っ」

「でも、その日は、
いつもは仕事に行ってる時間なのに、
お父さんが帰ってきて、
私が殴られている所を、見られてしまったの。
お父さんは怒って。
怒って………怒っ…」


私の様子がおかしい事に気づいた宇髄さんは、
私の体を掻き抱く。


「睦!もういい。もう、いい…」


あぁ、宇髄さんだ。
あったかい。


「お父さん、お母さんを包丁で…」

「‼︎睦!」


信じられないとでも言うように
宇髄さんは私を呼ぶ。


「もう言うな!」

「聞いて‼︎」


私は宇髄さんを見上げた。
涙が、止まらない。
宇髄さんは、驚いて押し黙る。


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