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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第6章 回想2




お家柄、ってのは、
ほんの子どもにはどうにもならねぇモンで、
否も応もなく、親には従う決定事項だ。
なりたくてなるモンじゃねぇ。
生まれながらに、なるべくしてなるモン。
そんな事が、当たり前だった。

なのに、ある日突然、疑問が俺を襲う。
何で、殺人兵器みたいな事をしているのか。
言われた通りに、言われた事だけを…。
そんなつまらない事だけのために、俺は生きてきた。
そう思ってしまったら、
もう以前のようにはなれなくて、
ある日俺は1人、外へ飛び出した。
少しでも、1人の時間がほしかった。

そうして見つけたのが、あの空き家だ。
程よい広さの庭に座り込む。
雨風にさらされ、変色した縁側に背を預け
空を仰ぐと、
白い雲がゆったりと旅をしていた。
雲。
…あんなモンでさえ、うらやましいくらいだ。
もういっそ、俺、アレになれないかな。
なんて。

アホらしくなって視線を戻すと、目の前に塀。
木で出来たその塀に的を描いて…
…描いてはみたが…
せっかく外へ飛び出したってのに
やる事は結局、いつもと同じ。
クナイを、正確に投げるだけ。
はぁ…。
あーぁあ。

俺はまた、縁側に背を預けて地面に座り込み
そこへ向かってクナイを投げる。
刺しては抜き、また刺しては抜く。
こんなに近い距離からも、真ん中には
当たりゃしねぇ。
もうやる気も出ねぇや。
今までの完璧な俺様は、
ずっとしてきた事に疑問を抱くようになってから
すっかり影を潜めてしまった。
スランプだ。
…そんなんなってる場合じゃねぇんだよ。
あぁ…
もう、ダメだ。

そう思った瞬間、敷地内に侵入者の気配。
…空き家のはずだ。
こんな所に、誰が何の用だ。
でも、殺気も悪意も感じねぇ。
だから俺は、それを無視してクナイを投げた。
…横からの視線が痛ぇ。
そいつは、俺がクナイを投げるのを
物陰から黙って見ていた。…何だコイツ。

「…こそこそ見てんじゃねぇ」

びくっと、驚いたのがわかった。

「ハナからわかってんぞ」

何を見てんだよ。
俺が気づいてないとでも思ってんのか。
だいたいそれで隠れてるつもりか。
…あからさまに、俺は苛立っていた。
それはコイツになのか、俺自身になのか、
それとももっと、他の何かになのか、
自分にもよくわからなかった。

…この距離で、俺の声が聞こえてねぇわけがねぇ。

「…」
「…」



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