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炎柱

第8章 炎柱の恋 杏寿郎side





タッ…タッ…タッ…

地面を蹴る自身の足音のみが響く。


俺は日の暮れかかった山道を
小走りに進んでいた。


(よもやよもやだ…!)


任務後、向かう予定だった、
藤の家紋の家へと急ぐ。


昨夜、
別に大した力はなかったが、
妙な血鬼術を使う鬼と出会した。

倒したのは夜明け近かった。


その後の事後処理云々で
結果、未の刻を過ぎてから帰路についた。


(きっと待ちかねている事だろう)


藤の家で待つ美玖を想い浮かべ、
自然と頬が緩む。


美玖は、
煉獄家代々の任地内にある藤の家の娘。
幼き頃から見てきた、

妹のような存在だろうか。

父上に連れられ、
よく一緒に遊んだものだ。


…漸く門が見えてきた。


門の前では、美玖が
今か今かと待っていた。


心が満たされるのを感じる。
帰ってきたのだ…と。


よもやよもや。
すっかり遅くなってしまった!


声をかければ、
美玖は笑顔で振り返り、


杏寿郎さん!
お疲れ様でございます…!


と、満面の笑みで迎えてくれる。



いつもの客間へ入り、
さっそく風呂へと向かう。


いつもの事ながら、
万全の体制で迎えられ感心してしまう。


湯に浸かり、汗を流し、
用意された浴衣を纏い部屋へ戻ると、

美玖が部屋にいるのが見えた。


美玖!
とてもいい湯だった!礼を言う!


部屋に入り声をかけると、

美玖はびっくりした様子で
何かぶつぶつと呟いている。


…?
まあいいか。


うん?どうしたんだ?
それよりも、美玖も夕餉はまだだろう?

早く食べてしまおう!


向かい合わせに座り、
食べ始める。


うむ!うまい!うまい!

美玖、今日もうまいぞ!


素直に感想を言った。


美玖は遠慮がちに、
お粗末様です…と呟いた。


世辞で言っている訳ではないぞ?
すごく上達したではないか!


すると、真っ赤になって、
その話はするなと慌てている。


愛い。
つい、からかいたくなってしまうな。



…しかし、本当に美味い。
さつまいものみそ汁も、
煮え加減がちょうどいい。


ふと、昔の事を思い返す。


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