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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第3章 小さな根城


 夜更けに、冨岡が産屋敷の元を去ると、敷地のすぐ外に宇那手の気配があった。

「屋敷へ戻れと言ったはずだ」

「師範、鬼の気配がします。様子を探っている様にも感じられます。此処で殺してしまっては、柱に近い存在がこの近辺にいることを、鬼に伝えてしまうかと思い、手を出さずにいました」

「賢明だ。今は放っておけ。屋敷の中にはまだ他の柱が残っている。戻るぞ」

「はい」

 宇那手は、冨岡にも劣らぬ瞬発力で地面を蹴り、闇夜を駆け抜けた。

 冨岡が貰い受けた屋敷は、山の麓にある、小さな物だった。

 玄関を潜った瞬間、冨岡はハッとして足を止めた。

「冨岡さん、夕飯をご用意しました」

 屋敷内でのみ、柱と隊士の役割を忘れるという暗黙の了解で、宇那手は微笑んだ。

「鮭大根です」

「⋯⋯教えた覚えは無いが」

「鱗滝様から、お手紙で伺いました。冨岡さんに訊くよりは、早いかと思いまして。落ち込んでいた様にお見受けしましたので、頑張ってみました」

 花の様に笑う宇那手に、冨岡は姉の面影を見た。

「初めて作ったので、上手く出来ているか分かりませんが⋯⋯」

「宇那手、お前も俺のことが嫌いか?」

 冨岡は、ずっと気に掛かっていたことを訊ねた。宇那手は、困った様に首を横に振った。

「分かりません。私の人間関係はとても狭く、好き嫌いの判別を付けられるほど、多くの方と関わって来ませんでした。ですので、相対的に見て、貴方のことが好きなのか、嫌いなのか、判断が出来ないのです。⋯⋯ただ、貴方のために料理をしたいとは思えました。心から」

「そうか。⋯⋯しかし、人手を増やした方が良いだろう」

 無関心、無頓着な冨岡にも、この屋敷が蝶屋敷に比べて、暗く、殺風景なことは分かった。そして、任務から戻ったばかりの宇那手が管理をしている。彼女の身体には、相当負荷が掛かっているはずだ。

 昨晩の戦いの後、柱合会議に呼ばれ、一旦この屋敷に戻って食事の支度をした後、気付いた異変を報告するために、また冨岡の元へ走って来たのだ。

「私は、家族が欲しいとは思いません」

 宇那手は、料理の載せられた食器を並べながら、穏やかに本音を述べた。
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