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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第56章 先生と私(現パロ)〜武田信玄〜



模範テストの丸つけをしながら、空欄やバツの多い解答に手が止まり、武田先生が小さな声で呟いた。

「どうしたらもっとやる気が出るかな…」
「先生からご褒美貰えたら頑張れます」
「…ご褒美?」
「はい、先生とお出かけしたいです」
「お出かけ…ねぇ」
「ダメですか?」
「うーん、駄目だね。何故なら君は生徒で、俺は雇われた家庭教師だからさ。親密な関係になるのは禁じられているんだよ」
「お出かけが親密な関係?そんなの変ですよ。私は、外で先生と勉強したいんです。それだけですよ。ずっと家だと息が詰まります」
「…本当に?外でなら頑張れるの?」
「はいっ!頑張れます」
「………はぁ、仕方ないな。ちょっとだけだよ」
「わーい!」
「じゃあ、次はこの問題をやろうか」
「うっ…またですか?」
「あともう少しだから、頑張ろうね」

でも、先生と外で逢えるかもしれない。
プライベートでっ!

私は有頂天だった。
私から無理矢理誘ったのだとしても、了承してくれたのだから。
ちょっとは脈アリ?
…なんてね。

私は浮かれていた。


私は以前から、先生の個人的な連絡先は知らない。
小論文を送る用のパソコンのアドレスしか教えられていない。
でも、先生との唯一の連絡手段だから…。
私は毎日小論文を書いて送った。
それだけやれば、誰だって上達するだろう。

先生は、少し直しを教えてくれて「ここはこう表現した方が相手に伝わります」とあくまでも先生としての返事しかくれない。
それでも嬉しくて。
毎日、パソコンにかじりついた。

……私は、先生と繋がっていたかった。
どんなカタチだって構わない。

後日、先生は約束を守ってくれた。

『これは俺の携帯の番号です。待ち合わせの時、迷ったらかけて下さい。 武田信玄』

そう一言添えて。
小論文の採点だけじゃない返信は初めてで、何度も何度もその一文を読んで…指先でなぞった。

「先生…ありがとう」

でも、あんなに嬉しかったくせに、すぐ連絡が出来なかった。
恥ずかしくて、なんて送れば良いかわからなくて。

私は結局1日寝かしてしまったのだった。


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