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今宵、蜜に溺れてく

第2章 今宵、君に酔う




きっけは、些細なことの連続。
始まりはいつだって突然、必然とやってくる。





『匠、また頭痛いの?おかーさーん、匠また頭痛いって』
『あらあら、おとうさまの会社から帰って来るとだめね、匠くんには合わないのかしら』
『でもあそこには、匠のおかあさんがいるんでしょ?匠、おかあさんに会いにいってるのよね?』
『………そうだよ、理緒』
『おかあさん、匠顔色悪いよー』
『ベッドまで運んであげましょうね。あまーいココア持っていくから』
『おかあさん、蜂蜜たっぷりね!』
『はいはい』




理緒の父親の開発部門には俺の実の母が、いて。
いまでこそトップに君臨するものの、あの頃、まだ俺が小学生の頃はしがない一社員のひとりに過ぎなかった。
まだまだ俺も理緒も幼稚園にすら入る前。
実の母親だと紹介され、お遊び程度に母親のパソコンをいじっていた。
ただ、はじめてみるそのおもちゃに、興味を持ったのも事実で。
幼稚園へと入園しても、母親に会うという名目でそのおもちゃをいじり倒し、気付けば。
真っ青な顔した母親が後ろに立っていたのを覚えてる。
それから週に何度か母親に呼び出され、パソコンを与えられた。
はじめはおもちゃで遊んでいる感覚で楽しかったし、母親が喜ぶのを見るのは嬉しかった。
だけどだんだん、体に異変が起き始めたのは小学生になってすぐ。
パソコンを始めると、頭がいたくなる。
眠気が、襲ってくる。



甘いものが、欲しくて。
甘いものがないと、いられなくて。
頭も割れそうに痛くなるし。
死んじゃうって、何度も思った。
だけどその度に理緒が。


『はい、匠。チョコレートだよ?』


俺を助けてくれるんだ。







そのあと、散々母親に内密で検査されて。
自分の能が人より優れていることを知った。
同時に。
それは隠さなければいけないもの、ということも知った。



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