第6章 すれ違う心
あれから数日たって、やっぱりどう考えてもかかしとあったことは夢だと思えなかった。
今日は火の神様のお祝いの日___
たくさんの人が集まり、大きな火をたいてそれぞれにお祝いを行う。
出店がでたり、子供たちから大人までそこで夜を過ごすのだ。
やっぱり行こう!
そう思ってかかしのお面を片手に、火の神様のもとへ急ぐ。
今日、何かが起こるかもしれない…
そんな確信のない期待を胸に抱きながら山道へと入っていく。
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たどり着いた火の神様の場所では
子供から大人まで皆それぞれはしゃぎ、酒をのみお祭りを行っている。
私は参拝だけすませ、ひと気の少ないかかしとはぐれた階段の場所へ行ってみる。
そこだけはやっぱり神聖な冷たい空気が流れているようで、下っていく階段は、まるでどこか別の場所につながっていくような雰囲気______
このお面…ここに置いてあったんだっけ…
なんとなく…ただなんとなくといった感覚で、その狐のお面を顔にかける。
「!?」
一瞬だけどそのお面越しにみたものは、かかしの…後ろ姿?
もう一度つけて見てみる。
「なに…これっ…」
そこに見えたのは、間違いなくあの時見た、同じ狐のお面、そして同じ服を着た銀髪のかかしの後ろ姿だった。
周りにはたくさんの血塗られた人々が数えきれないほど横たわっており、立っているかかしも同様に血塗られていた。
後ろの気配に気づき少しお面をずらして振り向く左目は真っ赤な色を放ち、残酷で冷徹で、それでいてその姿は脆くはかない。
恐怖と震えが一気に襲い掛かり、まっすぐ保てなくなった体は、そのまま階段から前のめりになっていく。
なれないお面なんかつけるから、こんなことになってしまうんだ…
痛まない体を不思議に思うと同時に、ふわりと体が誰かに受け止められた。
「なんで、マリがそのお面つけてんの?」
聞き覚えのある声…