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私が死のうと思ったのは【ヒロアカ夢】

第14章 ディスコース



依然として私の方を見ようとしないが、先ほどとは違う重い沈黙が流れ始める。これは聞いちゃまずかったか、と今更気づけどもう遅い。

言い訳しようが彼を励まそうが、どれも今の状況を悪化させるとしか思えない。言葉に迷っていれば、今度は怒りや困惑が混じった声色で轟が話し始めた。

「…無意識に使ったんだ…これじゃあいつの思う通りだ」

そう言葉にすれば彼はより一層眉間にしわを寄せ、己の左手を睨み始める。

『…轟くんって。ああ、えっと…』

「言えよ、聞きたいことがあるなら」

『いやでも余計なお世話だし、やめとく…』

「言え、俺がいいって言ってんだから」

また失言しないようにと言葉を濁せば、轟が顔をあげて私を見る。

オッドアイの瞳に見つめられればこのまま逃してもらえそうにないことを悟り、意を決す。

『…轟くんってさ、お父さんを否定するためにヒーローになりたいの?』

「……は?」

『前話してくれた時、私は轟くんがヒーローになる上でお父さんっていう障害があるから、それを君なりに乗り越えるため個性を封印してるのかと思ってたんだけど』

「…」

『でもなんだか…今の轟くんを見てるとヒーローになるためじゃなくて、お父さんを否定するためだけに行動してるみたいで…』

「…」

『…それが本当に轟くんの目標なら私がとやかく言うことでもないんだけど。それが轟くんのなりたい物なのかどうか気になって』

「…目標…」

『だから余計なお世話だって言ったでしょ、気を悪くさせたらごめん』

「…お前…知ったような事をいうんだな」

私が話すにつれてどんどんと顔を歪ませいった轟は、言葉を絞り出すように呟く。

『それは、ごめん。轟くんの心情が分からないけど、少なくとも私にはそう見えたんだ』

「…ハア」

そのまま大きくため息をつけば、何を言うわけでもなく立ち上がり歩き出す彼。そしてそんな彼を引き止めるもお門違いだと分かっているので、ただただ去る彼の背中を眺めた。

「お前といると調子狂う」

『…?』

背を向けたままそう吐き捨てれば、次第に見えなくなってしまった轟の姿。
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