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私が死のうと思ったのは【ヒロアカ夢】

第1章 リフレクション


しばらく黒髪の少年は横で私が落ち着くまで様子を見ていてくれた。

雄英側から支給されたペットボトルの水を飲み干せば、吐き気で遠のいていた意識も幾分ましになる。やっと動かせるようになった重い腰を上げて、ありがとうございました、と彼に軽くお辞儀する。


「いいって本当!同じヒーロー志望だろ!?同じクラスになるかもしんねえし、タメでいいって!」

『えっと、うん。…ありがとう』


ニカッ、と眩しい笑顔を向ける彼に、久しぶりに母以外の人間と喋った私は言葉につまる。彼の純粋な赤い瞳にボロボロな姿の自分が写り、また情けなくなってしまう。

しかしそんな心情の私などお構いなしに、彼はフラついた足取りで会場出口へと向かう私の横に付いてきた。


「…俺、切島鋭児郎ってんだ。お前は?」

『希里トバリ、です』

「希里な!覚えておくぜ!」

ガツガツとくる彼に少々たじろぎながらも、会場の出口まで少し会話を続けた。

数分だけだったが彼との会話の中で、ヒーロー化志望なだけあってとても熱くパワフルな人物だとわかり、また胸が強く痛む。



私にはないものが、眩しくて、辛い。



「あ、このまま更衣室か。もう大丈夫か?」

『大丈夫、ありがとうね』

「気にすんなって!じゃあ、一旦ここでお別れだな」

『そうだね、じゃあ…』

「あ、おい!」


軽く会釈し、その場を後にようとする私の肩を彼が掴む。


「…お互い合格してるといいな、雄英」

『…そうだね。その時は、またよろしく』

「おう!!じゃあまたな!」


嵐のような彼、切島鋭児郎はまた風の如く去って行った。

一方私は軽くあげた手を弱々しく下ろし、深くため息をつく。

…本当に合格できるのだろうか、あれで十分だったのか。


もっともっとできることがあったんじゃないか。


思うことはたくさんあるけれど、
今の私には自分の帰路へと歩き出すことしかできなかった。
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