• テキストサイズ

私が死のうと思ったのは【ヒロアカ夢】

第21章 サイン



時は五月半ば、職場体験が始まる週。

「全員コスチューム持ったな?」

相澤先生が聞けば、皆それぞれ自分のヒーローコスチュームが入ったボックスを持つ手に力を入れる。

その日は各々自分らで決めた職場体験先へといくため、クラス全員で駅に集合していた。

「くれぐれも体験先のヒーローに失礼のないように。じゃあいけ」

「「「「はい!」」」」

相澤先生がゴーサインを出せば、またみんな各々自分の行く先へと向かい始める。そんな中、一言も発することなる立ち去る飯田に、私、麗日と緑谷は顔を合わせた。

「飯田くん!」

駆け出す緑谷に続き三人で飯田に追いつけば、彼は振り返ることなく足を止める。

「…本当にどうしようもなくなったら言ってね、友達だろ」

そう緑谷がいえば、静かにこちらを振り向く飯田。

「ああ」

そして飯田は、何かを覚悟したような、苦しい笑顔を見せた。

彼の様子になぜか嫌な予感を抱くも、今の私たちにはこれ以上何も言えることはなくて。それっきりまた歩き出してしまった飯田に、私たちはただただその背中を見守ることしかできなかった。

「…僕たちもいこうか」

「うん…」

『そうだね』

飯田が見えなくなってしまえば、私もやがてその場を後にする。

『じゃあ二人とも、またね』

「うん、またね希里さん。麗日さん」

「二人とも気をつけて!電話するねー!」

緑谷と麗日に別れを告げれば、後ろで待っていてくれた轟に駆け寄る。

『ごめん、お待たせ轟くん』

「ああ、じゃあいくか」

目的地が同じである彼と新幹線に乗れば、二人でエンデヴァーヒーロー事務所へと向かう。しかし飯田のことがまだ引っかかっている私は思うように彼と話すことができず、私たちはしばらく無言で。

そんな中適当にコンビニで買ったご飯を取り出し食べ始めれば、轟がこちらをチラチラと見始める。しかしずっとこちらを見てくるくせに何も言わない彼に、私はついに痺れを切らしてしまう。

『どうかした?』

「…いや、それ…」

『え?お蕎麦の事?』

「どこで買ったんだ」

『え、普通に駅の横にあったコンビニだけど…』

「コンビニか…」

/ 155ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp