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私が死のうと思ったのは【ヒロアカ夢】

第20章 ブラッドレッド



『爆豪?』

「……へっ?」

突如予想していなかった人物の名前を口にした彼女に、俺は間抜けな声をだす。

しかし希里は冗談を言っているようには見えず、驚いた様子で俺の後ろを見上げている。悪い予感がしながらも後ろへと振り向けば、見慣れたツンツンヘアーの男が怒りに震えながら立っていた。

「ば、爆豪!?なんでお前がここに!?」

「…そりゃあこっちのセリフだわ!!!何しに来たテメエら!!!」

『映画を見にきたんだけど』

「そんなことわかっとるわ!俺が聞いてんのはなんで、今日、お前らが俺の横にいるんだよ、ああン!?」

「お前、一人で映画見に来たのか…?」

「見ちゃ悪いかクソ髪!!そもそもテメエらが邪魔しにきたんだろシネ!!!」

『ええ…』

いつも通り怒り散らす爆豪は、どうやら偶然にも同じ映画を見に来ていたらしい。それも偶然にも俺たちの横の席だったらしく、彼はいつにも増して御機嫌斜めだ。

「クソが、帰るわ!」

「ま、待てよ爆豪!せっかくチケット買ったんだろ!?」

帰ろうとする彼を引き止めようと勢いよく立ち上がれば、彼の腕を掴む。それに続いて希里も席を立ち上がれば、爆豪説得しようと彼に話しかけた。

『うん、そんなに気になるなら私たちがいくよ』

「ハア!?気になんねえわクソ!」

『じゃあ見ようよ』

「上等だクソ女シネ!」

綺麗なUターンをして席にドカッと腰を下せば、またブツブツと文句を言い始める爆豪。そんな彼に呆れながら俺たちもまた席へとつけば、一気に騒がしくなった空気にため息をつきながら先ほどの事を思い出す。

もしあのまま喋っていたら、俺はうっかりと口を滑らせていたに違いない。

確かに俺は誰かに追い越されてしまう前に、彼女に想いを告げてしまいたい、彼女を自分のものだけにしたい。しかしそれは焦る気持ちばかりに気をとられているようで、情けない。

そしてそれは希里にも、失礼なことだ。

初めてここまで人を本気で好きになったんだ、それだけ大事にこの関係を築いて行きたい。

あいにく二人きりのデートではなくなってしまったけれど、今だけは爆豪があの瞬間に突然現れたことに感謝した。





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