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暁の契りと桃色の在り処 ー信ー

第4章 咲の涙


始まった生理は、少し違っていた。
いつも通りの日数だった割には、さほど重くなく。
でも、終わらずに少しだけの出血が続いた。
チクチクする下腹部の痛みと、だるさと吐き気。
そして頭痛。
生理なはずなのに、すっきりしない症状に不安が募った。

『家康様が来たら、相談してみましょう。』

「そうだね。」

咲が、葛湯を作ってくれた。
暖まるだけでなく、寂しさも追い払ってくれる優しさが嬉しかった。


家康と政宗に、召集に向けての知らせが行ってから五日が過ぎた。


『、いるか?』

「秀吉さん?」

『入るぞ? …仕事してたのか。邪魔だったか?』

「大丈夫。少し疲れたなぁって思ってたから。」

『じゃあ、休憩だな。茶菓子持ってきた。』

私が縫いかけの着物を片付けていると、秀吉さんは、慣れた手つきでお茶の支度を始めた。

『これを、貰ってきた。』

「これ…!金平糖?」

『信長様に、お前の部屋に届け物をするって話したからな。』

「届け物?」

『…ほら、家康からだ。』

湯飲みと金平糖ののる皿の隣に、秀吉さんは小さな箱を置いた。

「家康から…。あっ。ふふっ、良くわかったなぁ。」

『薬か?』

「うん。…月のさわりの前後に頭痛や眩暈で体調崩すから。それの為の薬。実は、切れちゃったんだよね。」

『…まだ、辛いのか?』

「え?」

『いや、咲がな。頭痛や怠さが取れていないようだと。』

「そ、そうだね。秀吉さん、咲と話すんだね。」

『あっ、あぁ。の身の回りで変わったことがないかとかな。適時報告させてる。』

「そうなんだ。」

『…なぁ。』

「ん?」

『その…。なんだ。…まだ、出血してるのか?』

「えっ。」

『すまない。咲が、月のさわりが落ち着かないって悩んでいた。家康に相談が出来れば、と。』

「…そう。」

咲が秀吉さんに私のことを話す理由は、なんとなく解る。この時代は、衣食住、夜の後始末まで世話をしてもらうのが普通なようだから。
でも、やっぱり…生理の事は聞かれたくなかったな。
そう思うと、秀吉さんと視線を合わせられなかった。

『ごめんな、言いにくいよな。この薬は、家康からの文と一緒に届いたんだ。家康は、2日後には駿府を出るようだ。こっちに着くのは、3日後か。』







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