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ONE PIECE短編集

第9章 緩やかにいま墜ちてゆく(トラファルガー・ロー)


用件を聞いてくるクロエに場所を移動すると告げると怪訝な顔をする。
内容も目的地も言わないローに当たり前の反応だが、言えば逃げられてしまうため能力で飛ぼうと考えていた。

「着けばわかる。支度しろ」

ドアまで歩みを進め急かすように視線を向ければ、数秒考えたのち諦めたように身支度を始めた。

「ここには戻らねェからそのつもりで」

追加すれば更に眉根にシワが寄る。
綺麗な顔が台無しだ。

然程時間かからず支度を終えたクロエはローをドアの外に促す。
「出て」と言われるが、こちらは支度さえできれは逃げられないように早々に移動するのみ。
後ろ手で鍵をかければ半歩引いたクロエが得物に手を掛けた。

「信用ねェな。知らねェ仲でもないだろ」
「…海賊が何を言うっ」

猫目の鋭い眼光に、そういえば調べた書類の中に"大の海賊嫌い"と書いてあったなと思い出す。
得物に手をかけているこの姿勢が如実にそれを物語っていて、七武海でなければ得物はとうの昔に抜かれていただろう。

「ROOM…」
「…っ、」

能力を展開し、大きく張ったサークル内で場所を入れ換える。
一瞬にして視界が変わり、執務室だったそこは同じ島内の宿の一室になった。

「ぅっ…」

慣れない移動と、わざと落とした場所によってクロエは背を打つ。
だが柔らかなスプリングに身体を包まれたクロエはしばし呆然としたが、真上から覗き込んだローを見るや否や頭突きの勢いで飛び上がった。

「猫みてェだな」
「…ここは」

宿泊施設、というのは内装からわかると思うがそれ以外にわからないクロエは窓へと寄る。

「そんな遠くへはいってねェ。近くの宿だ」
「…何が目的だ」
「お前だ、クロエ」

能力を使いクロエの待つ全ての武器を奪う。
至るところから出てくるそれらを部屋のすみに落とすと、攻撃の意思がない旨を表した。

「そんな邪険にするな。数年ぶりの再会だろ」
「海賊になんか会いたくない」
「つれねェ。あんなにヨかったのにか?」

一瞬にしてクロエの背後に回り、反応されて飛び退く前に海楼石が内側に埋め込まれた手錠を片手に嵌めた。

「っ…」

かくんと崩れるクロエを抱き止め、再びベッドに落とす。
手錠をベッドボードの上の飾りに引っ掛けると、もう片方の手にも嵌めた。


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