第1章 花信風 滝澤 /平子
什造先輩たちも帰り、お開きモードになったのでそろそろと、私達も帰り支度をする。
有馬特等、真戸先輩たちに挨拶をしてから琲世さんにもお礼を言った。
丈さんと2人、帰路につく。
「丈さん」
「ん?」
「今日はお付き合い頂いてありがとうございます」
「別にこれくらいは」
「有馬特等と話してる時の丈さん、可愛かったです」
「可愛いってなんだそれは」
「有馬特等の無茶振りに振り回されてるのが目に浮かんで」
クスクス笑ってると
「…お前が笑えるならそれでいい」
そう言って、私の手を優しく握った。
私もその手を握り返す。
ドキドキする。
この感情が何かはもう気付いていた。
でも、政道さんがチラつく。
あの人は、やっぱり真戸先輩をいつも見つめてるのに。
この気持ちのままでは丈さんに申し訳なくて、何もいえずにいる。
それでも丈さんはそばに居てくれて、甘えてしまう私は弱いままだ。