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番外編の蝶姫

第1章 IFストーリー 安土の蝶と越後の龍 「琴菜様リクエスト」


今回は織田軍と上杉軍、武田軍の停戦協定が結ばれた時のお話から遡ります。


それは、しのぶが安土城に来ておよそ三週間経った日の事だった。その日は朝倉攻めの最中で、織田軍と上杉軍、武田軍が揃って野営の天幕に一箇所で集まっており、停戦協定のことで話し合いをしていた。今話し合われているのは、停戦協定の上杉軍と武田軍が出した条件についてだ。特に、第三の条件に安土の名だたる武将達は難色を示していた。

「…なんだそのふざけた条件は。此方に人質を差し出せという事か?」

丁度、安土城から信長に呼ばれてやって来ていた、秀吉が難色を見せた。

「クックッ…安土の姫様は敵国の武将に大層、人気らしいな。」

光秀はふざけたように言いながらも瞳は眼前の二人を見据えて鋭く光っていた。そんな中、一際、物騒な雰囲気を醸し出していた男が口を開く。

「…ほぅ…貴様等、俺の持ち物に手を出す気か…?」

織田軍の大将、信長は険しい顔をしながら、提案を持ち掛けてきた二人に鋭い視線を向けた。その視線を向けられた二人は何事も無かったかのように返した。

「…どう受け取ってもらっても構わんよ。…いやぁ…まさか、お前が天女を気に入ってるとはねぇ。天下の魔王様にお気に召されるとは、天女も大変だなぁ…。」

にこやかに笑いながらも、目は一切笑っていない男、信玄は宿敵を見据えながらも余裕の表情をしていた。

「…戯言を言うな、信玄。…信長、さっさと条件を呑め。さもなくば、…この話は無かったことにさせてもらう。」

信玄の軽いジョークにも鋭く両断した、謙信は中々、交渉に応じない織田軍にそして、信長にしびれを切らしていた。

「…ちっ、一週間は此方としても困る。…四日間だけだ。それ以降は絶対に認めぬ。」

信長が更に眉間に皺を寄せながら、先程の協定の内容を思い出して、目の前に座る二人を睨みつけた。

「…ふっ…さっさと、そう言え。…ところで、しのぶは今何処にいる?」

謙信はキョロキョロと辺りを見回し、お気に入りの彼女がこの場に居ないことに疑問を持った。

「…あやつは此処には居らん。政宗と家康と一緒に大名共を蹴散らしに行っておるはずだが、どうも戦況が著しくないらしい。…軍神、貴様にしのぶを預けよう。」

「ふんっ…言われずともそのつもりだ。…行くぞ、佐助。」

謙信は天幕の外に待機していた佐助を呼び、この場を去った。
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