第1章 堕ちるとこまで堕ちてみた
ずっと…ずっと苦しかった
誰も知らない、私のことなんて見えない世界に連れて行って。お願い。もう何も見たくない。
お気に入りのレースの白いワンピースを着て、厚底のベージュのサンダルをはいて、舗装されていない砂利道を歩く。
五月蝿く蝉は鳴き喚いているらしいが遠く感じる、森は青々として、雲は大きく風にのって動いているはずなのに、私が写す世界は色彩をなくしたまま。
『着いた…』
そこは、山の中に唯一架かる赤色のアーチの橋
黙々と橋の真ん中まで歩んでいくと、私は靴を脱ぎ、橋の手すりに登る。
『さようなら』
私は目を瞑り、手を広げ、自由の翼を広げるように、ゆっくり体を傾けて、川へと落ちていった。
ザブッーーーン
水しぶきが高くあがる、体が重く感じる。
『あぁー川へ射し込む光ってこんなに綺麗だったんだ。世の中ってもしかして素敵な景色もっと沢山あったのかな?』なんてぼんやり想いつつ川の流れに身を任せている。
息が続かない…やっぱり苦しいもんなんだ。
川の流れに逆らわず身体がぐるぐると回転させられている。
あぁもう……
そんなことを想いながらうっすらと眼をあけて、川の底をみると、、
『えっ?』
色白で端正な顔立ちの男性が私の手を掴み引き寄せてくる。包帯がぐるぐる巻かれている細い腕なのに、なんでこんなに力があるんだろう。
そんなことを考えながら、私は意識を手放した。。。