第5章 きっかけは手掛かり
「あなた達は、確か…」ティアナは怯えた表情で逃げることも叶わず急に現れた二人に慌てた。
ここは自分が歌うには最適な場所で今の今まで誰も来なかった。
狼狽えるティアナを気にせずに友達のように話し続ける。
「すっげー、綺麗な声だなー!どうしたら、あんたみたいに歌えるんだ?」
無邪気にイザベルはティアナに訊ねる。
「…えっと………」
「ほんと、調査兵団に歌姫がいるなんて誰からも聞いてないよ、もしかして俺たち邪魔かな。」
心にもない言葉をファーランは繰り出していく。
「あ、そういう訳では…」驚いてはいるが少なくとも、ここに居ても良いらしい。
「そこに丁度良い木が倒れて椅子替わりになるから、よかったらもっと聞きたいな。」
「うん!俺ももっと聞きたい!」
ティアナは、倒木に座る二人を横に今度は落ち着いた歌を歌い出した。ティアナの声は澄んでいて、心地良い。
一曲歌い終えるとティアナはファーラン達の反応を伺っていた。
[どうでしたか?]
それからというもの、ファーラン達は殆ど毎夜ティアナのお気に入りの場所へ赴き、次第に警戒心を解いたティアナもイザベルにつられて自分のことを話すのも増えてきた。
勿論リヴァイにも、うまくいきそうだと伝えてはいたがイザベルが懐いている事にリヴァイは顔を顰めた。
そんな夜が続いてる、ある夜にティアナはケースを手にやってきた。
「歌ばかりでは飽きるでしょ、今夜はヴァイオリンを弾いてみるね。久々だから自信ないんだけど」
ニッコリと微笑み、弓に松脂を滑らせ、音をチューニングする。
結果から言うと弦を弾き、弓を滑らせるヴァイオリンは素晴らしかった。
イザベルは感想も言えない位にポカンとしていたし、ファーランも気の利いた言葉を紡げなかった。
何も言わないので、ティアナは気まずそうな顔をしていたが、この瞬間だけは情報を聞き出す事も忘れ、ファーランは心からの賞賛の言葉をのべていた。