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【ツイステ】ねえ、そばにいて

第4章 忘却曲線


~幼少期~

自分を束縛する立場なんて、取り巻く世界なんて、忘れたかった。

一人で家を飛び出して走った。それがとても危ないのは知っている。それでも、満足に遊べやしない、我慢ばかり、親はペコペコ頭を下げるだけ。みんな嫌で、遠くに行きたくなったんだ。
その先で出会ったのは、






「ジャミルー」

「アーヤ!」

大きく腕を振るアーヤ。町外れで出会った友達で一緒に好きなだけ遊んだ。ここに来れば、俺は自由だった。
この時間が大好きだった。だけど、






「もう来れない?」

「正式にカリムの従者として仕えることになった。……沢山の時間をアジーム家で過ごすから……ヒック、ここには来れないんだっ」

悔しかった。せっかく見つけた大好きな場所なのに、もう来れない。彼女に会えない。悲しくて涙が止まらない。

「ジャミル、私がジャミルに会いにいくよ」

「アーヤはわかってない!ぼくの家に来ても遊べやしないんだ!うわあああん!!」

お別れを言いにきたのに、ただ泣きわめくだけになった俺を彼女は小さな手で頭を撫でてくれた。この感触を忘れたくなかった。








だが数ヵ月後、アジームの屋敷で有り得ない顔を見た。

「……なんで?」

「言ったでしょ。会いにきたよ!ジャミル!」

そこには、満面の笑みをこちらに向ける、メイド見習いのアーヤがいた。










「ジャミル」

懐かしい夢を見た。見上げるとアーヤが俺の頭を撫でている。

「人の部屋に勝手に入るとはどういう了見だ」

最近こちらが距離を詰めて顔を赤らめたアーヤは何処に行った。ため息をつく。順応性が高いのはいいことだが、他のヤツにもこうだったら困る。

「良く寝てたわね。部活後にカリムの夜食作って疲れたんでしょー。いいこいいこ」

「話を聞け。子ども扱いするな」

彼女がアジーム家で働き、さらにカリム専属になり、まさかナイトレイブンカレッジに一緒に通うことになるなんて、全く想像できなかった。
手を退かすためと見せかけて、ぎゅうと握った。自分と違う、滑らかな肌に細い指。女性の手。



あの日、俺の頭を撫でてくれた子どもの小さな手の感触は、忘れてしまった。
けれどあの時、俺を追いかけてアジーム家に来た、彼女の花が咲くような笑顔は、この先もずっと忘れない。
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