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手のひらの虹 【恋人は公安刑事】津軽高臣編

第9章 潜入捜査〈主人公目線〉


わたしが、視線だけで、百瀬さんの様子を見ると、百瀬さんは、信者に囲まれて、奥の部屋へ連れていかれてる。

わたしも、それを確認して、信者と共に、説法の行われた、会場の奥の部屋へと行った。

奥の部屋には、信者達に連れて来られた30名程の人が、椅子に座って、教祖を待っている。

百瀬さんは、わたしの一つ隣の席に座っていた。

席がいっぱいになると、教祖の愛善導師(本名)新垣徹が入室して来た。

「わたし達、【愛の下僕会】にようこそ!わたしの説法を聞かれた方全員に神はお喜びになっております!更なる祝福を貴方達にシェアさせて下さい。それが、わたしの使命だからです!」
新垣徹は、善人面でニコニコして、会場を見渡している。

「では、一人一人名前を呼ばれたら、順番にあちらの個室にお入り下さい」

先程の、にこやかに笑っていた、女性信者が言った。

わたし達は、会場に入る時に名前と住所を書かされている。
勿論、わたしと百瀬さんは、偽名と偽の住所である。

一人づつ、新垣の控えた小部屋に入ってゆく。
出て来た人達の高揚感溢れた顔付きが目に付く。

百瀬さんの順番が来て、彼は、個室に入って行った。
出て来た百瀬さんを見ると、神妙な顔をしている。

わたしの順番が回って来る。
女性信者に促され、個室に入った。
甘いお香の様な物が炊かれていた。
甘いその香りは、人に高揚感を与える類の物質が入っているようだった。
わたしは、出来るだけ、お香を吸い込まないように気を付けた。
新垣は、わたしの頭に両手を乗せると

「全知全能の神よ、この者に、祝福を与え給え。与え給え。神の祝福は、我の身体を持って与え給え!」

と祈る様に言った。

息を止める事に限界を感じた頃、わたしは、やっと個室から出る事が出来た。

この部屋にいた者全てが、個室から出て来ると、入信の是が非を信者達に問われた。

わたしが入信したいと旨を伝えると、女性信者が、微笑みを深くし、

「神が貴女を愛している事が良く分かります」

と言った。

女性信者は、
入信は、在家信者と出家信者の二つがあり、より多くの神の祝福を受けるには、出家信者が、良いと言った。

わたしが、出家に付いては、考えさせて欲しいと言うと、分かりましたと女性信者は言って、わたしの電話番号を聞いて来た。

電話番号を伝える事で、今日の任務をわたし達は、終えた。
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