第3章 目覚める瞳
元也side
朝から不機嫌な聖臣の顔を覗く。
「なんだ?」
「いや、いつになく眉間に皺寄ってるよ。
何かあった?」
目線を逸らせば、マスク越しでもわかるほど不貞腐れている。
いつもならココで沙耶が、聖臣の頬を両手で触りながら機嫌を取ってた事が懐かしい。
「……」
無言って言うより、言葉を考えてる様子で、こう言う時は、聖臣の言葉や考えがまとまるまで待つことにしている。
「今朝、沙耶の様子を見に行ったんだ。
起きた時は、昨日より顔色も良くて安心したんだけど…」
また、言葉が詰まっている。
なんだ?言いづらい事でもあったのか?
「言ってくれなきゃ、状況判断も解決策も浮かばないよ。
それに、事故にあった時点でイレギュラーなんだ。
何が起こってもおかくしくはないと思うけど」
思い腰をあげるように深い溜息をついている。
良くない事は、確かだ。
聖臣が、ジャージのポケットから一枚の名刺を取り出す。
「うん?何コレ?」
渡された名刺を見ると,『南條香里』?精神科医師?
「聖臣、これって!!」
「沙耶は、この間のI.Hの事忘れている…」
「はぁ?なにそれ?」
忘れてるって?何考えてんだよ。
冗談なのか?
「ソレ、冗談?」
「冗談じゃない…アイツ…南條先生から事前に聞いていた」
「いつ?」
「沙耶が目覚めた日、帰りがけに言われた」
なっ!目覚めた日って俺が先に帰った日じゃ…なんで、聖臣だけに?
「先生になんて言われてたの?
って言うか、何で黙ってたんだよ」
「話せる時間なんてなかったんだ、悪かった」
こちらも溜息が漏れる。
まったく肝心な事言わないとかあり得ないんだけど、それよりも何を言われたのかが肝心だ。
「事故の記憶とそれに繋がる何かが失われるって言っていた。
アイツは、事故で負った代償と引き換えに、バレーに関する記憶が、抹消される事を予想していた」
バレーに関する記憶の抹消?!
あんなに大好きだったバレーを忘れるなんて、残酷だ。
「それと…だぶんコレは序章に過ぎない。」
「はぁ?まだあるのかよ?」
頷きながらも不安に揺れているのが、一目瞭然だ。
「沙耶が、それを何かの拍子に思い出すことが合った場合…状況が、一変するとも言われた」