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【ツイステ】引き合うさびしさの引力

第5章 やがて糸は火となり繭となる



「何、オレの気持ち否定するわけ」

フロイドの瞳孔がキュッと細くなる。
ユウはゴクリと喉を鳴らすが、口の中はカラカラだ。

「いえ、そういう訳では………ただ今までそういう素振りではなかったので……」

「小エビちゃん、恋したことねぇの?」

「え、」

「恋っていうのはさぁ、突然なの。前兆とかねぇの」

ユウは少し驚いた。
まさかフロイドから恋についての話を聞くとは思わなかったのだ。

「確かにオレが小エビちゃんのこと好きかもって思ったのはつい最近だけど、それって何、いけないことな訳?
そもそも好きになった理由が糸だったとしても別によくない?」

いつものフロイドとは違い、彼は早口で捲し立てるようにそう言った。
ユウは目を見開き、そして睫毛を伏せる。
長い睫毛が彼女の頬に影をつくった。

「そう……ですね。本当に」

ユウは想像した。
もしジャミルに自分の恋はただの勘違いだと言われたら。
それは凄い辛いことだ。
ジャミルが疲れている表情をしていれば、どうしたんだろうと心配になるし、彼が笑顔でいれば嬉しくなる。
これが恋じゃないならなんなのか。

ユウは伏せていた睫毛を上げ、フロイドの目を見つめ返す。
その気持ちに応えることはできない。しかし真摯に受け止め返事をしなければ。

「ありがとうございます、フロイド先輩。
多分でも、好きと言われて嬉しいです」

にこり。
少しぎこちなく、ユウは笑った。
それにフロイドはきょとんとすると、しかしすぐに「うん」と頷いた。

綺麗だと思った。
夕焼けに照らされ、赤く色づく彼女が。

フロイドは好きだなと実感した。
多分じゃなくて。
フロイドはこの時初めて、ちゃんとユウに恋をした。





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