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好きのベクトル【ヒプマイ】

第4章 DAY 3



他の学年より、一足先に学年末テストを終えた二月の頭。
進路の決まった三年生は自由登校となり教室へ足を運ぶ回数がグンと減った。
そんな三年生の一回目の登校日。
久しぶりに制服に袖を通し、久しぶりにスクールバッグに荷物を詰め向かった学校はなんとなく懐かしくて、思わずふふっと笑ってしまった。

学年末テストの結果が返ってきて、卒業式の練習をして午前でおしまい。
獄さんのところでご飯を食べようか。
そう考えて昇降口から出ながらメッセージアプリを開きメッセージを送る。
事務所に着くまでに獄さんはメッセージに気づくかな。
そんなことを思いながらスマホをポケットに入れ獄さんの事務所の方へ歩き出す。
他の子達は駅の方へ向かうからこの道を通るのは私一人。
イヤホンを片耳に入れお気に入りの音楽を聴きながら獄さんのところに向かっていた。


「そこのオネーサン、学生証落としてる。」

その言葉に反応し後ろを振り返れば私よりも歳上のお兄さん。
そのお兄さんは学生証を見るとちらりと私を見て「桐生、なずなちゃん…?」とわたしの名前を問う。
イヤホンを外しながらはいと返事をしお兄さんの持つ学生証に手を伸ばした瞬間、お兄さんの顔が笑みに歪む。

その表情に戸惑いを覚える間もなく手を掴まれる。
ばたばたと数種類の足音が聞こえたかと思ったらわたしの横に止まる黒塗りの乗用車。
抵抗しようと声を上げるが口を塞がれても拘束される。

わたしは抵抗虚しく男性達の車に乗せられてしまったのだった。



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