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月神の恋人 【鬼滅の刃 黒死牟 R18】

第5章 ※雨の蜜夜 とこしえの契り※


翌朝。

キリカは鏡台の前で髪を結い上げていた。右側の頭頂部で緩くまとめ、残りの髪を横に垂らす。簪はどれにしようか迷ったが、結局、黒死牟に買ってもらった虹色の宝石の簪にした。キリカの一番のお気に入りだった。


「よし」

櫛を鏡台に置く。鏡に写った姿を見て、キリカは満足げな表情を浮かべた。

「ずいぶんと・・・、めかし込んでいるな・・・」

「そうですか?」

背後から声を掛けられたキリカが振り向いた。視線の先には擬態を解いた黒死牟がいた。日光を避ける為、薄暗い廊下に立っている。

「いつもと同じですよ。髪がうまく纏まらなくて、少し手こずってしまいましたが」

そう答えたキリカの声は、いつになく弾んでいる。

何故なら、これから住んでいた村に帰るからである。怪我で身動きが取れなかったとは言え、一月も行方を眩ましているとあっては、皆、心配しているであろう。そう思い、一度、帰る事にしたのである。

一方、黒死牟の表情は翳りを帯びていた。

以前、聞いたキリカの生い立ちから推測するに、村には彼女を気に入らない連中がいるに違いない。危害を加えられるような事がなければ良いのだが。

心の中では、言い様のない不安が絶えず渦巻いていた。何度か止めようとしたが、久々の帰宅に心を弾ませるキリカに水を差すようで気が引けた。

「黒死牟様、どうかされたのですか?」

案じるようなキリカの声が、物思いに沈む黒死牟を現に引き戻した。

「支度が出来たので、そろそろ行こうと思うのですが・・・」

身支度を終えたキリカが、黒死牟の顔を覗きこむようにして立っていた。何度か黒死牟に声を掛けたものの返事が無かったので怪訝に思ったのである。

「あぁ・・・、分かった・・・。気を付けて行ってくるのだぞ・・・」

「ありがとうございます。急に黙ってしまわれたから何かあったのかと・・・」

「すまない・・・。気にするな・・・、それより、キリカ・・・」

見上げているキリカを抱き寄せ、腕の中に閉じ込めた。口付ける。

「駄目です、黒死牟様。紅がついてしまいます・・」

唇の感触に、膝から力が抜けそうになる。それでも何とか逃れようと、キリカは黒死牟の肩を叩いた。


















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