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月神の恋人 【鬼滅の刃 黒死牟 R18】

第3章 月満ちる夜



「そっ、そんな事ないです。褒めすぎです。きれいなのは私ではなく着物です・・・」

キリカはかぶりを振った。『愛らしい』その一言が、キリカの心を激しくかき乱していた。

「数ならぬ身の私です。褒められると真に受けてしまいます・・・」

うつむき、囁きのようなか細い声で言った。頬や耳が熱を帯びているのを感じる。何故だろうか。黒死牟の言葉の一つ一つが心に迫ってくる。こんなに切ないのは生まれて初めてだった。

「キリカ・・・」

「・・・・」

黒死牟が、キリカの火照った頬に手を当てた。そのまま、キリカの耳に囁きを落とす。

「自信を持て・・・。お前は美しい・・・」

「・・・・っ!」

キリカが顔を上げた。が、どんな顔をすればいいのか分からない。狼狽えるように視線を反らした。が、その視線を追いかけるように、黒死牟がキリカの顔を覗きこんだ。

キリカの惣闇色の双眸と、黒死牟の漆黒の双眸。二人の眼差しが静かにぶつかり合う。

「キリカ・・・、私は・・・」

黒死牟が思い詰めたような表情でキリカを見た。何かを言おうとしたが、途中で諦めたようだ。

キリカは黒死牟の真意が汲み取れず、不安げに問い掛けた。

「黒死牟様・・?どうかされたのですか・・?」

「いや・・、何でもない・・・」

言って、黒死牟は遥か遠くを見るような眼差しをした。去来した感情をゆっくり振り払うかのように。再度、キリカを見つめた時は常と変わらぬ様相であった。

「キリカ・・・」

「はい・・・」

「良かったら私の屋敷に住まぬか・・・?」

黒死牟が、キリカの手を取った。

「あの屋敷は一人で住むには些か広すぎる・・・。悪い話ではないと思うが・・・」

「ご迷惑ではありませんか・・?」

「お前がいると空気が華やぐ・・・。いて欲しい・・」

「はい・・・。お言葉に甘えさせていただきます」

返事と共に、キリカは黒死牟の手を握り返した。手は少しヒンヤリとしていたが、触れていると不思議と安らぎを感じた。


曇りのない月が二人を見ていた。











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