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月神の恋人 【鬼滅の刃 黒死牟 R18】

第3章 月満ちる夜


「廊下の掃き掃除をしている所です。洗濯はさっき終わりました」

「それは助かる・・。お前は働き者だな・・」

「いえっ、そんな事はないです。する事がなくて暇だったので。それだけです」

キリカが照れたように笑う。些細な事でも褒められると嬉しいものだ。

「キリカ・・」

「何ですか?」

「あとで町へ行かぬか?お前に、礼がしたいのだが・・」

「えっ、お礼なんてとんでもないですっ。私、大した事はしていないので・・」

「そんな事はない・・。それに、年頃の娘はいろいろと必要であろう・・」

キリカの身の回りの物は何もなく、確かに不便であった。それに、着ているものも、みすぼらしくはないが、あまりに質素な着物。若い娘が着るには、いささか地味な代物である。

「あ、はい。でも・・」

嬉しいけど、素直に甘えてしまってよいのだろうか。戸惑ったような表情を浮かべるキリカの肩に、黒死牟が手を置いた。

「遠慮をするな・・・。たまには町へ出てみるのもよかろう・・・」

「そうですね・・・」

黒死牟に助けられてから、キリカは半月近く、この屋敷に滞在している事になる。たまには外出してみるのも良いかもしれない。

「決まりだな・・。夕刻になったら此処を出る・・。支度をしておくように・・」

「はい。よろしくお願いします」



日が沈んだ後。

山を下りた二人は町の中にいた。ガス燈がつき、昼間のように明るい。往来は着飾った男女が楽しそうに歩いている。和装の者もいれば、洋装の者もいた。見るものすべてが真新しく、刺激に満ちていた。

「こんな華やかな場所、生まれて初めてです」

キリカが興奮したような声をあげた。目を輝かせながら、店の並びや町行く人の群れを眺めている。

キリカは住んでいた村から殆ど出た事がなかったのだ。

そうしているうちに、一軒の瀟洒な構えの店に連れていかれた。

着物や帯、櫛や簪だけでなく、化粧品、舶来品の衣服や装飾品も置いてあり、凡そ揃わないものはないと言った感じの店であった。

桃色、深紅、萌木色、藤色、菫色、空色、山吹色・・。

何十枚もの着物をキリカは放心したように眺めていた。鮮やかな色彩の洪水に目眩がしそうになる。































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