• テキストサイズ

月神の恋人 【鬼滅の刃 黒死牟 R18】

第13章 ※宵の宮・雨月夜の契り※


キリカは答えない。わざとらしく片眉を上げると、肩に置かれた手と黒死牟の顔を交互に睨み付けた。

(これは・・・)

精一杯、怒ったふりをしているのだ。まるで毛を逆立てた猫のようだと黒死牟は喉の奥で微かに笑った。

「キリカ・・・、此方へ・・・」

「行きません。巌勝様のような意地悪な方の所には行きませんから」

一段と冷ややかに言い放ち、キリカは置かれた手を振り払うように肩を揺さぶった。

「これは困ったな・・・、どうしたら機嫌を直してくれるのだ・・・」

「・・・知りません。怒ってなんかいませんから」

「やれやれ・・・」

黒死牟はキリカの身体をやや強引に引き寄せた。後ろから覆い被さるように抱きすくめる。

「私が悪かった・・・、機嫌を直してくれぬか・・・」

「・・・・」

「キリカ・・・」

囁くように名を呼ぶと、キリカの頬に触れた。視線を向けさせる。

「私が悪かった・・・」

重ねて詫びると、キリカの顔をじっと見つめた。

(・・・・)

真摯な声音と眼差しに、どうしたものかと、キリカは俊巡していた。本当は、これっぽっちも怒ってなどいない。からかわれてばかりなのが気に入らなかっただけなのだから。

(それに、さっきだって・・・)

キリカは知っていた。黒死牟の姿を見た年頃の娘達が皆、浮き足だっていたのを。

(隣には私がいたのに・・・)

ちらちらと視線を送る女性。うっとりとした面持ちでため息をつく女性。

思い出し、胸が針で刺されたように痛んだ。

もっと、綺麗な女性がいたら。もっと、上品で優雅な女性がいたら。そちらにいってしまうに違いない。

(こんなにも、お慕いしているのに・・・。私の気持ち、巌勝様には分からないんだわ)

キリカの惣闇色の双眸が、うっすらと滲んだ。

「如何した・・・?」

「なっ、何でもありません・・・」
















































































/ 123ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp