第5章 V * アルミン・アルレルト
夢見る年齢はとうに過ぎたし。
白馬の王子様なんて存在しない事も知っている。
でも…せめて誰かの1番にはなりたかった。
『………なんて、思わず辞世の句っぽいものを思い浮かべてた…』
なぜそんな言葉を思い浮かべたかと言えば。
見た事もなければ登った記憶すらない"この木なんの木"も驚くであろうほどに大きな樹の枝には腰を掛けていた。
『やっぱり私は…死んだのかな?』
見渡す限りに広がる荒野、腰掛ける枝から数メートル下には…人の形を模した不気味さを存分に振るう謎の生き物らしきものが群がっていた。
『だとするとここは地獄?』
しかし天国に行けるほど徳を積んではいなくとも地獄に落ちるほど不道徳な行動も悪事も働いた事はない。
『あれかな…流行りのあれかな?』
先日Kindleで大人買いをした異世界転生をし王子達を選り取り見取りキャッキャウフフするコミックスやラノベを思い出していた。
しかし実際にの腰を掛ける枝の下には謎の生き物の群れ。
『あはは…ある意味選り取り見取りィ…』
樹の幹に背中を預け、帰宅途中にコンビニで購入したエコバッグをあさる。
『コレがあると言う事は…やっぱり異世界なんちゃら的なやつなのかな…』
はエコバッグからビールを取出し呷った。