第18章 抱擁メルティ!【Floyd】
「…私」
「ん?」
「私、フロイド先輩がこれを履いてもっとカッコよくなっても、気にしませんから。余裕です」
不敵に「フフ」という顔をしてみせた。
小さくて可愛い小エビちゃんが、そんな顔をするとアンバランスで、なぜだか愛おしい。
「まぁた強がってんの。うけるー」
「きゃあっ」
シューズと一緒に小エビちゃんを抱き寄せた。
彼女の頭に自分の顎をのせ、スリスリとした。
あー、オレ。この子をずぅっと離さねぇんだろうな。と思う。
オレ束縛されんのは嫌いだけどー、したくなる時ってこんな気持ちになんだ。
「オレねぇ、小エビちゃんが可愛くなるならもっとカッコよくなる。そしたら小エビちゃんもー、もっと可愛くなってねぇ」
「はい」
「小エビちゃんの気持ちもわかるようになるよ。でも言いたいことあったらさぁ、ゆってよ。ちゃんと聞くから。オレセンパイだもん。」
「ふふ。はい」
フロイドの胸元で監督生が笑うと、すぐったかった。
でも心地いい。
「小エビちゃんあのねぇ」
「はい」
「昔さぁ、今みたいに魔法薬が発達してねー時ね。陸に上がった人魚はさ、また海に戻る時泡になって溶けちゃうんだって、いわれてたんだよぉ。」
「溶けちゃうんですか?」
「そぉ。」
でもねぇ、フロイドは言う。
「オレ小エビちゃんとだったら、泡になってもたのしーよ。」
海でも陸でも空の上でも。
どこまでも行けてしまうだろうなと。
「フロイド先輩。」
「なぁにぃ」
「大好き」
「あはっゆってくれたぁ。オレもねぇ、小エビちゃんすきぃ。」
小エビちゃん、だいすき。
何回でもいうよ。
フロイドはこっそり、監督生のブレザーのポケットへと手を入れた。
「?何、なにか入れました…?」
「んふふ、見てみたらぁ?」
フロイドの腕の中で、監督生はポケットに落とされた何かを探り出した。
見れば、それは青い色をした綺麗な宝石。
雫の形をした、アクアマリンのひとかけらだった。
「これは…?」
あはっ。
フロイドは照れくさそうに、小エビちゃんの髪に顔を埋めた。
「ないしょ。」
END.