第17章 終夜プラネタリウム!【Malleus】
「ツノ太郎に、私の秘密を教えてあげる」
「秘密だと…?」
人間というものは、他人に言えない心に秘めたものを共有することで信頼を深める、という話を聞いたことがある。
では彼女は、僕に心を許しているということなのか。
「ここ最近ずっと、夢を見るの。幸せな夢よ。」
「夢だと」
監督生はうん、と頷いて柔らかく微笑んだ。
よほどその夢を気に入っているのだろうか。
「夢の中で、誰かが私に寄り添って歩いてくれるの。」
…その目は、何だかうっとりとしていた。
監督生は幸せな夢のストーリーを反芻する。
森の中や川の流れに沿って、誰かとずっと歩いてゆく、暖かい夢。
誰かは監督生を見て笑う。
彼女もまた、その人に微笑み返すのだ。
夢は幻だと言うけれど。監督生は言う。
「…でも私には分かる。あの人こそ、私を愛してくれる人だって。」
「愛す…?」
何故分かるのか。
マレウスにはわからなかった。
人間の言う愛とは一体何なのだろうか。
彼にとって愛し、愛でる存在といえば故郷茨の谷の自然や趣味で眺めるガーゴイル。
特定の誰かではないことだけは確かだった。
彼女は、夢の中で出会った人物に何を感じたというのか。
愛とは何か。
それは例えば…自分よりも弱い生き物を看病してやろうと気まぐれに思う、そんな感情をいうのだろうか。
「実はここへ来てから、不思議な夢ばかり見るの。どれも現実とリンクした不思議な夢で」
「ほう」
「だからきっと、この夢も現実になる」
人の子は確信を持っているようだった。
金色の星をぼんやりと見つめる彼女は、その誰かに思いを馳せているらしい。
「その者は、学園の生徒か」
「分からない。顔はよく見えないんだけれど、王子様みたいな人。とても綺麗な目をしているのよ。」
「王子…」
まさかレオナ・キングスカラーではあるまいな。
僕には関係ないことだが、人の子が愛するのがあの男であったのなら少し気に触るし不愉快だ。
僕には関係ないがな。