第16章 愛染モーレイ!【Jade】
「5万マドル、ですか」
「5万マドルです。」
アズールはジェイドに言った。
モストロ・ラウンジにアンティークものの家具を置きたいから5万マドルで調達して来い、と。
ジェイドはアズールがモストロ・ラウンジを大切にしている気持ちを知っているし、唐突かつ少々面倒な命令にも慣れている。
何より彼はできる男だ。
であるから、例のごとく胸に片手を添え
「かしこまりました」
と頷くのであった。
「ジェイド。まだ話は終わっていませんよ」
「まだ何かご注文ですか」
早速出掛けようとしたジェイドがくるっと身を翻す。
「もう今日は遅い。それに急ぐ用事でもありませんし」
「何故です。善は急げと言うでしょう」
「"善は"、ね。」
「おやおや?」
「ジェーード小エビちゃんと行きなよぉ〜〜〜」
夜の談話室、大声でそう言いながらフロイドが入ってくる。
そしてソファにベタッと座って言った。
「え?アズール今そういうハナシでしょ?ちがう?」
「そういう話ですよジェイド。貴方監督生さんを誘って週末行ってきてください」
「そういう話とは、何でしょう」
ジェイドはわざとらしく、「???」という顔で小首を傾げる。
「僕が監督生さんとですか?何故でしょうか」
「ニコニコ笑ってるトコ見るとー、わかってんじゃねえの?」
「いいえ、全く分かりません。」
ソファにもたれかかるアズールとフロイドとは対照的に、直立したままのジェイドは笑顔を崩さない。
「理由などこの際どうでもいい。兎に角ジェイド。週末…もう明後日ですね。監督生さんとデートして来なさい」
「承知致しました」
「ショーチすんのかよ」
「はい。ボスのお望みですから」
では、と言ってジェイドは自室へ戻った。