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【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第3章 3分の1でも選ぶとは限らない



 翌日の早朝の全校集会。例え誰かが俺に視線を向けてなくても、そう錯覚してしまう。特にこの日はなぜか余計に胸騒ぎがえらい酷かった。
 教室、廊下、登校、下校、外出、春高。全部の視線が、常に俺に突き刺さる。治といる時は余計にや。俺も人間やし、正直疲れる。まるで二十四時間頭の先からつま先まで監視されてるみたいな感覚になる。

「なあ侑、最近前田先生と田中先生付き合うてるらしいで」

 背の順で前におった友達が振り返って我に返る。「そうなんや、知らんかったわ」と適当に流してボーっと突っ立てればいつの間にか全校集会は終わってた。一年生から順番に教室へ戻るまで、辺りを適当に見渡していると偶然間から水田さんの姿が見える。
 そこまで背低くないのに結構前なんや。一六〇cmはあるって意地でも言うとったのに。

(.....まあ治のクラス運動部多いしな)

 しばらくして視線を外して、また視線を向けると水田さんが目が合った。思わず小さく「ぁ」と声を漏らした。お互いにそれに気づいて、最初に水田さんが唇を嚙みながら一瞬視線を逸らすけど、また横目で俺と目が合った。
 目が合ってごまかすように水田さんは控えめに微笑んで、しばらくして列の間から消えて行った。
 俺は、結構強い人間やと思う。でも、それが時々裏目に返って無条件に自分が許せなくなる。でもこんくらい平気や、死ぬわけやないし。

「あ、侑くん」

 その日の昼休み中、廊下で水田さんとすれ違った時、珍しく小さく呼び止められた。「大丈夫だった?」と小声でそう眉を下げながら問いかけられる。
 なんのこというとんの自分。全く身に覚えがなく「何が?」と問いかける。そう言えば水田さんは困惑気味に「え、...いや? なん、でもなかったらいいや」と、他に俺に問いただすこともなく、気を付けてね。と言い残して、移動教室でノートと筆箱を抱えながら先を行く友達の後を追って行った。

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