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【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第3章 3分の1でも選ぶとは限らない



店内と外の温度差で水田さんが小さく唸る。パピコンを半分に引っ張り分け、そのひとつを水田さんに差し出す。口を尖らせながらわざとらしく奪い取るように受け取りパピコンを握りしめたまま、そのまま先を行ってしまう。
 俺は構わずそのまま歩きながらパピコンの上をちぎって口にしていると、少し先で水田さんが立ち止まった。開いていた距離がどんどんと縮まり隣に付いた頃、目の前を塞ぐように差し出されたのはまだ開封されていないパピコンだった。...いや、開けようとした痕跡はあった。変に引っ張ったせいで白くなった取っ手を見て、水田さんに視線を映す。

「開けてよ」
「どうやったらこうなるの?」
「なんか開かなかったの!!」

 「いつもは開くの!」とムキになって言う水田さんに思わず笑ってしまった。「なんか仕掛けた?」と問いかける水田さんに「まさか」と失笑しながら蓋に付いているアイスも後から手渡した。
 手に取ったもの、触ったもの、見ているもの、歩き方も、こんなにハッキリと目を向けたことはなかったし、これからもきっとなさそうだ。学校にいると結構察しがいいからすぐバレるんだよな。それに来年は受験生、春高、進路に卒業。こうやってのんきにアイス食べている時間も、もう多分ないだろうし今のうちだ。
 パピコンの外袋のパッケージを見つめていると、その中に切れ端を入れながらいたずらに笑う水田さんに、我に返るように一息ついた。俺は仕返しに、奢ったパピコンのレシートを水田さんのブレザーの中へと押し付けた。
 通りすがりのコンビニでごみを捨て、しばらくしてこの前男子達と話していた噂が気になった。

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