• テキストサイズ

【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第3章 3分の1でも選ぶとは限らない



「ああ、できたね。一ヶ月前だけど」
「行った?」
「行ってない」
「じゃあショッピングモールいかない? 確か五駅くらいだったかな」

 自然と驚きはしなかった。行った? と聞いた後の水田さんの質問は、何となく予想が付いていたから。

「いいよ、暇だし」

 本当は、―――行ったことがある。けど多分、「行った」と言ったら多分あいつは平気で一人で行きそうだ。そういう人間だから。この非日常が、どこまで続くか知りたくなった。妙に周囲の音が耳に障るのは、野外の公園だからなのか。

 公園の水場でベタベタになった手を洗って、なりゆきで一緒にショッピングモールへ行くことになった。別に一緒に行くからと言って特別会話が弾むわけではなかった。電車も道中も無言。上の空、もしくはスマホをいじってるかのどっちかだ。ほんと何考えてるか分からないやつ。 先陣をきって歩く水田さんに一歩遅れて後ろを歩いた。
 丁度帰宅途中の他校の制服がちらちらと車内に現れ始める。新しくできたショッピングモールは平日にも関わらず広場には多くの子供連れがいた。それを横目で追いながら水田さんの後を追った。ショッピングモールに入ると気になるものを片っ端から物色してはお店を見て回る水田さんの後を俺はついて行くだけ。

「そいう服が好きなの?」
「可愛いなって」
「普段何着るの」
「制服」
「喧嘩売ってんの?」

 勝手に店の中入っては物色して何事もなかったかのように出て、外で待ってた時は俺と合流する。手に取って、値段を見て、戻して、覗いて、通り過ぎて、また店に入って手に取る。その繰り返し。
 正直この説明だけ聞いたらつまらないと思う。これ自体が楽しいと言うわけではないけど、見ていて、観察していて、なぜか早く帰りたいという感情は浮かばなかった。

/ 89ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp