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【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第2章 夏に濡れ衣ぎを着させたい





 もうすでに、夏休みになって欲しい。
 もうすでに帰りたい。
 これから下校時間や電車で、一緒に帰っているおそらく両者お互いに恋愛感情を持っているであろう稲荷崎高校の先輩、同級生、制服を身にまとった他校の人達を私は今後どんな気持ちで見たらいい? どこを見ながら後ろを歩いたらいい? 殴られてもないはずなのに頭が痛くなってきた。

 歩いて八分後、校門を通り玄関へ、二年一組の下駄箱前で傘を閉じる。
 ずぶ濡れになったローファーと靴下を脱ぎ、事前に持ってきた替えの靴下とタオルを取り出して近くの椅子に座った。すると、背後から「おはよう」と訛りが混じりの控えめな声がして視線を送る。

「…おはよう、治くん」

(今日、部活じゃないんだ……)

 そんなことを横目で思いながらすぐに視線を外した。
 席の近い角名くんは例外として、治くんとはあれ以来一度も喋っていなかった……気がする。と言うのも私が関わらないでと言ったからそうなんだけど。
 それに、前回の件も含めて最近分かったことがある。

 あの日、私は〝「関わらないで」〟と言った。あの三人の前で、明確に。
 それなのに、あの二人は言ったそばからやって来た。それもなんの躊躇もなく。なんの疑問も持たず。
 あの先輩が世話を焼く理由が分かった気がした。まあ正直保証みたいなもので、期待はしてなかった。


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