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【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第1章 喧嘩止めたら殴られた。





 侑くんが持っているということは、多分あそこでブレザーのポッケに手を入れてた時に袖に引っかかって出ちゃったのかもしれない。廊下も薄暗かったし、何しろ聞き耳に集中していたのは確かだ。
 嗚呼、なんで気が付かなかったんだ。とんだ失態だ。私としたことがちゃっかりバイト先を知られてるじゃん馬鹿が。

「あ、ありがとう」

 やっぱり複雑な感じだ。必要な時以外話しかけないでと自分から言ったくせに原因作ってるの私じゃんか。
 後から侑くんが私の両手がトレーとトングで塞がっていたことを察すると、侑くんは何も言わずエプロンのポッケに入れてくれた。

「ここでバイトしてたんやな。………ここのパン美味しいよな」
「……食べたことあるの?」
「おん、おかんが買ってくるで」
「…そうなんだ、じゃあ午前中とかだね」

 そんな特に需要がない会話を残り少ないパンを並べ直していると、不意にあの時、治くんが女子生徒に言った言葉が頭に残った。
 いやでも、自分で話しかけるなって言ったくせに、話しかけるのってどうなの。そんなことを思っていると侑くんは「なんや、俺そんな見て……ま、まさか昼に食べたポテチのノリついてた⁉」なんて被害妄想しだしたので慌てて「そんなんじゃないよ‼」と思わず声を上げ弁解する。

「…もっと、〝無理〟とかじゃなくて、いい言い方なかったんですかね?」
「なんや、急やな。言いたかったことってそんなことかいな」
「………まぁ。それに、女の子泣いてましたよ」
「俺のバレーの邪魔する女は嫌いや」
「…そうなんだ」
「おん」

 相変わらず気まずい空気が流れる。ごまかすように黙々とパンをコンパクトに一か所にまとめていると最初に沈黙を破ったのは侑くんだった。


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