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【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第1章 喧嘩止めたら殴られた。





「お、水田。今日お前日直やったな。」

 放課後、薄暗く人気のない教室を後にし下駄箱へ向かう途中、担任の伊藤先生に偶然ばったりで出くわした。さらに、今日は私が日直だったという世界一いらないおまけつき。
 先生はまだ何も口にしてはいないが、その手に持っている図書館の本らしき参考書四冊が今後の展開を、それは呆れるほど、綺麗に、分かりやすく、物語ってくれている。そして此の手の推測から、セリフは大体――想像がつく。
 もはや想像もしたくないが〝やりたくない〟なんて言うのは私のキャラではないから言わないけど。

「どうせ帰るんならこの資料図書室に返しといて」

 ほーら、やっぱり。と私はあからさまにそう呟いた。心の中で。
 こうなると最初から分かっているのなら気付かないフリをするなり、バイトを言い訳にさっさと逃げればよかった。と、後から後悔が押し寄せ引きつく顔をグッと抑え込んだ。

 実際、この後は本当にバイトだけけど今日は午前授業だった為、ついさっきまで時間を潰そうと教室で一人仮眠していたので実際凄く急いでいるわけでもない。ちゃんと余裕を持って学校を出てる。
 けど私はあくまで平凡な優等生を演じているわけで、先生の言うことは聞かなければならないルールが存在する。常に都合のいい生徒でいることも、従順になることも優等生であるためのひとつの錯覚手の一つだ。
 私の平和な学校生活への投資だと思い、嫌そうな顔はせずいつもどおりの私で振舞ってはいるが、実際のところ心の中の私は渋々受け取っている。…世に言う猫かぶりである。だって、未来には期待したいし。その為だったら私はなんだってできる。

 そして伊藤先生は「ほなよろしくな」と、私をパシリに使うだけ使って職員室へと戻って行った。
 ていうか、そっちから来たならついでに図書館寄れよ…。という皮肉な心の声は飲み込んで、私は運命のままに図書館へと向かった――。


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