第2章 ようこそ
「君がナマエ・ミョウジ・・・」
彼の口から零れた声は透き通っていて、綺麗なエメラルドグリーンは私を捕らえた。
ブチャラティは私の身なりをひと通り彼に伝えていたたらしく、私を部屋に入れるなり静かに去っていった。
「あの、私・・・組織をもう辞めたいんです」
見つめられる瞳に耐えられず、俯いてしまう。
「それは・・・申し訳ないけれど今は許可できないんだ」
「どうして・・・」
私みたいな弱々しい女を、どうしてそんなに組織に置いておきたいのか。私には理解できなかった。
「君の家族は代々パッショーネの・・・言わばサーバントリーダーなんだ。君は組織に必要だ」
「・・・言葉を返しますが、私には何も出来ません。それに私は今狙われてるんです。きっと組織に関わったら・・・巻き込んでしまう」
「それは心配しなくていい。君の永遠の安全を約束する。」
「でも私を狙う人達はみんな私の両親に殺された一般人なんです。それに彼らは私がギャングだなんて知らない・・・人殺しの娘だから恨んでいる、それだけなんです。」
私は両親の代わりなんだ。彼らの恨みは私が責任をもって買わないといけないんだ。
「君の両親は・・・殺されて当然だったんだ。麻薬を騙し売るなんて到底許されることじゃあない」
そうだ。わかってる。私は両親が憎い。けれど、心の底から恨めないのは血の繋がりがあるからだろうか。
私が組織から離れ、狙われ続けようという考えだって・・・。
「けれどそれは君が、そこまでして償わなければいけないものなのか。君を狙う一般人とやらも決して殺しはしない。僕達は君の“護衛”を約束する。その代わり君には麻薬のルートや・・・君のその幽波紋を、組織に役立てて欲しいんだ。」
幽波紋を・・・。私のこの、悪魔のような幽波紋を?
目の前で座っているこの少年は、まだ少し幼さを残してはいたが、確かに私の目の奥を見据えていた。
「もちろん、住処や生活も保証する。・・・先日、またこの街で麻薬が見つかったんだ。出来れば早く君には協力をお願いしたい。」
「そんな・・・!私、まだ決断なんてできない・・・」
まだ兄さんを失った確信だって・・・・・ない!